2019年3月18日月曜日

無意識のうちに伝わっている“上から”の良くない振る舞い


ある社長にこんなことを言われました。「自分で判断しようとしない社員が多くて困る」とのことです。
でも、私はこの会社では仕方がないと思います。社長自身が一方的な指示命令を出すことが多く、社員に判断させる余地を与えていないからです。ただし、社長はそのことにあまり自覚がありません。理由は社内では誰からも指摘されないからです。
私がそういう場に出会えば指摘をすることもありますが、それは社外の第三者だからできることで、社員からすれば、社長によけいなことを言って、何か不利益があるのは嫌だという心理があるでしょう。

また、社長が言う「判断しない社員」に含まれる上級管理職の人たちは、社長に対しては「一方的」などと批判をしますが、部下に対しては社長と同じように、「自分で判断しようとしない者が多い」と言います。
無意識のうちに社長をモデルに同じことをしていて、やはりそのことに対する自覚がありません。

別の会社の社長は、自分の直属の部下である部門長たちの振る舞いが、かつての自分を見ているようで心配だといいます。「一方的な命令」「強い言葉」「横柄に見える態度」などだそうです。
社長自身は、そのせいで自分が裸の王様のようになってしまっているのではないかとある時に気づき、以降はどの社員に対しても、絶対に威圧的な態度をせず、意見を良く聞き、いろいろ質問をし、取り組み方を一緒に考えるように心がけているそうです。

そうやって接していると、社員からの遠慮は少しずつ減り、本音の話が聞けるようになっていったそうで、意外にいろいろ考えているという事実や、自分が気づかなかった現場の事情がわかるようになったとのことでした。
今の部門長たちの態度は、自分がそういう手本を見せてしまっていたからだと反省しているそうです。

実はこういう話は、とても多くの会社で目にすることです。そして、この社長のように自覚して行動を変えられる人は実際には少なく、多くは上司からされた嫌な振る舞いを、そのまま部下にもしていて、しかもそのことに無自覚でいたりします。

こういうことが起こる場合に共通しているのは、「自分が接した上司の数が少ないこと」です。要はお手本が少ないのです。そうなると、自分が上司の立場になったとき、いつの間にか自分が経験してきた上司と同じ行動を取っています。

例えば、トップダウン一辺倒の上司を批判していても、自分が体験したやり方がそれだけだとすると、トップダウン以外の問題解決の引き出しは持っていません。結果的にはほぼ同じやり方をしてしまいます。良くない振る舞いでも、それが無意識のうちに伝承されているのです。
体罰を受けていた子が親になると、同じように体罰をしてしまうという話がありますが、親の手本は自分の親だけという人が大半だとすれば、そうなってしまう構図に似ています。
反面教師を本当に実践するのは難しいことです。

これを解決するには、まずは自分の行動に対して、無意識のままでなく意識することです。上司の良くない振る舞いに対して、少しでも反面教師を意識していれば、それとは違う方法を自分なりに考えたり学んだりしますが、無意識のままではそうはなりません。

上からの良くない振る舞いは、それが“無意識”のうちに伝わって定着し、実行してしまっていることを“意識”しなければなりません。
上司の行動パターンは、企業文化の一部です。良くない文化を変えるには、まずそれを意識することから始める必要があります。


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