2019年3月21日木曜日

シニアや女性の「活躍したくない」気持ちを責められるか


先日のことですが、ある大企業勤務の50代男性数人と話をする機会がありました。私に対して「自由に仕事ができてうらやましい」と言い、「でも自分たちには無理」と言います。
今の年令でこれから会社の枠を飛び出して、それなりに収入を得ようというのは、ハードルが高いのは確かです。

そして、「シニア活躍などと言われて尻を叩かれるけど、正直もう活躍したくない」などと口をそろえて言います。若い社員が聞いたら「働かないオジサン」「お荷物社員」「老害」などと憤慨されかねません。

ある調査によれば、65歳以降の就労意欲について聞いたところ、「仕事をしたい」が33%、「仕事はしたくない」が46%、「わからない」が21%とのことで、就労意欲があるシニア世代は3人に1人いる一方、それ以上の全体の半数近くは「仕事をしたくない」といっており、この割合は以前の調査結果よりも増えているそうです。
生活の問題で働かざるを得ないが、本音ではもう仕事を辞めてゆったり過ごしたいと考えている人が多いようです。

ただ、この気持ちを「やる気がない」などと責められるかというと、私は必ずしもそうは思いません。
「もう活躍したくない」と思ってしまう理由は、今までそれくらい真剣に仕事をしてきてこれ以上は限界なのか、不本意なことでも仕事だからと無理して従ってきたのか、そしてそれぞれ「定年までは」と線を引くことでやってきたが、それが先延ばしされていく環境になり、もうついていけないといっているように見えます。
会社としては「今まで面倒を見てきた」と思っているでしょうが、働き手は「いろいろ我慢して合わせてきた」という気持ちがあるでしょう。

これは「女性活躍」でも同じような話があり、女性を対象としたある調査で「専業主婦願望」について聞いたところ、「本当は専業主婦になりたい」という回答が約4割に上ったそうです。
また、現在専業主婦の人の5割が今の生活に満足しているものの、8割が老後を不安視していて4割が働きたいと考えているという結果でした。こちらも生活のためにやむなく働くというイメージの方が強い感じです。
共働きでは家事も育児も女性の負担の割合が多く、決して男女平等ではないという声も聞きます。

このどちらにも共通していると感じるのは、やはり「仕事は負担を伴う大変なもの」という認識です。シニアでいえば、仕事上の強制や束縛など長い期間に渡っての積み重ねがあり、そこから解放されたい思いであり、女性であれば、家庭内での分担の偏りや、会社からのサポート不足による行き詰まりなど、続けたいけど続けられないというようなジレンマです。
それをみんな一律に「活躍」などと言われてしまうと、肯定しきれない気持ちが出てくるのはよくわかります。

シニアや女性を取り巻く仕事環境は、たぶんこれから少しずつ改善されていくのでしょうが、その人の置かれた環境によってバラツキはあるでしょうし、その人の職業観や人生観によっても感じ方は違うでしょう。
ただ、「活躍したくない」の言葉の中には、単に楽をしたいというだけではない、多くのことが複雑にからんでいます。
シニアや女性の「活躍したくない」と言いたくなる気持ちを、私は一方的に責められません。


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