2020年3月12日木曜日

「トップダウン」と「ボトムアップ」のその時に応じたバランスとは


ここ最近、階層化しないフラットな形態の組織が注目されています。過度な管理や上下関係が、人間を疲弊させるということが、この考え方の出発点です。

実際に運営するとなると苦労も多いようで、実際にこれを取り入れている会社では、様々な試行錯誤を重ねているようですが、ここまでではなくても、できるだけ権限委譲を進めて、現場でできることは現場で処理するようにすれば、組織の効率は上がります。

従来の階層化された組織での話ですが、「トップダウン」や「ボトムアップ」という言葉がよく使われます。
「トップダウン」は社長や役員などの経営トップが意思決定を行い、それを現場社員へ指示として下ろしていくスタイル、「ボトムアップ」は現場の意見や提案を、経営陣が吸い上げて意思決定していくスタイルの組織運営です。

「トップダウン」と「ボトムアップ」には、それぞれメリットとデメリットがあります。
「トップダウン」の一番のメリットは意思決定の早さで、反対にデメリットは、自分で考えない指示待ち社員が多くなることです。
「ボトムアップ」はその反対で、メリットは現場の意見をくみ取りやすく、自分で考える社員が育つことで、デメリットは意思決定に時間がかかることです。

これをどう使い分ければよいのかということですが、その判断は在籍している人間の能力と環境によって変わってきます。
あくまで私が見てきた中ですが、「トップダウン」でうまくいっている会社は、ひとえに社長の能力によるところが大きいです。意思決定を誤らず、しかも素早く、さらにそれを現場も納得するようにかみ砕いて伝えていきます。「いいからやれ」などと、一方的に押さえつけたりすることはありません。
トップがしっかりした会社は、やはり成長も早かったです。

ただ、この会社も、いざ社長が権限委譲を進めようとすると、やはりそれに見合う人材が育っていません。社長はいろいろ工夫して育ててきたつもりでしたが、社員には「社長が決める」と染みついているので、なかなか自分から行動しません。
そして、どんなに優秀な社長でも、百発百中で当たりの判断ばかりではありません。ある判断ミスから会社は伸び悩み、業績は一進一退となってしまいました。

逆に「ボトムアップ」でうまくいっている会社は、現場の各部門に、それぞれしっかりしたリーダーがいました。そういう人材がいると、現場の課題はすぐ共有されて解決も早いので、業績はどんどん伸びます。社員たちのやる気も高く、良い循環で事業が回っていました。

しかし、景気後退による受注減から、社内の歯車が狂い始めます。それまではイケイケでよかったリーダーたちは、守りに入ると急激に行動が止まり、自部門の都合ばかりを言うようになりました。
ここから意思決定に時間がかかるという「ボトムアップ」のデメリットが出始め、現場の意見がまとまらないために、適切な対策が素早く打てません。やはり会社はじり貧に陥ってしまいました。

私が考える「トップダウン」と「ボトムアップ」のバランスは、環境が良くて現場に仕切れる人材がいるのであれば、「ボトムアップ」中心で進めることが良いとみています。
人材がいなければ「トップダウン」で進めるしかありませんが、そのままでは早々に会社の成長が止まるので、次世代の人材育成が重要になります。

これが良くない環境の場合となると、より「トップダウン」の比率を増す必要があります。守りの施策は、全社的な意識統一のもとに行わなければ効果が上がらないからです。「ボトムアップ」ではどうしても部門最適に陥りがちで、ピンチの時ほどトップのリーダーシップが必要になります。

単純化して言えば、好調時は「ボトムアップ」、不調時は「トップダウン」となりますが、どちらにも人間の能力の問題があります。能力のある人間がそのポジションにいるかどうかで、それぞれのバランスは変わります。
能力がない人に権限委譲してはダメですし、能力不足の経営者で会社が伸びるはずはありません。どちらの側により能力が高い人材がいるかによって、「トップダウン」と「ボトムアップ」の適切なバランスは変わります。

不調時ほどリーダーの能力は非常に重要です。今はまさにそれが問われている時期でしょう。「トップダウン」と「ボトムアップ」の適切なバランスで、何とか乗り切っていければと思います。


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