2021年11月22日月曜日

「働かないおじさん」はそんなに大勢いるのか?

ある会社で、俗に言われる「働かないおじさん」が問題として提起されています。年長の男性社員ですが、「不活性シニア」などと呼ばれ、その活性化は「不良社員対策」などと、いかにも反抗的で悪そうな、物騒な印象の表現をされています。

 

その中で、実際に「不活性シニア」「不良社員」に該当する人が、いったいどれくらいいるのかを細かく精査してみると、明らかに該当するような人は結局見当たらなかったそうです。

もちろんクレイマー的な社員が在籍していたことはありますが、シニア男性に限られていたわけではありませんし、そういう人はそもそも辞めてしまうので、長く在籍している年長社員に存在している可能性はほとんどありません。

 

実際にいたのは、その人の報酬と発揮しているパフォーマンスが釣り合っていないと思われる人たちでした。その人たちも自分なりに会社に貢献しようという気持ちはあり、ただ仕事をせずにさぼっているわけではありません。ただ、役職定年や業務の変更で、何をすればよいのかを見失っていたり、年齢のせいもあって、やはり新しいことについていくのが難しくなっていたりすることはありました。

努力や能力が足りない面はあるでしょうが、自分なりには順応方法を考えて、それなりの行動もしています。しかし、その仕事振りのままでは「給料に見合わない」などと冷たい見方をされています。相応の経験者という扱いになるので仕方がないところもありますが、周りが教えたりサポートしたりということは少なく、放置された感じになっていることが多い印象です。

 

一方、報酬のアンバランスというのは、社員本人の問題ではありません。年齢や勤続や年次評価などの組み合わせで、あくまで制度にのっとって決められたものです。不正をしたりごまかしたりしたわけではありません。これまでの制度が時代背景や会社の実態に合わなくなってきたということですが、これは会社の事情であり、社員に責任はありません。

 

決められた仕組みの中で、与えられた仕事を真面目にこなしてきた人が大半なのに、「給与に見合わない」と批判されます。「新しいことに手を出さない」「変化に対応できない」というのは確かにありますが、個人差はあっても年齢とともに順応性が衰えるのはやむを得ないところがあります。

世間のイメージでは、いかにもやる気がなく、仕事をせずに会社にしがみついているだけの「働かないおじさん」ですが、正真正銘の「働かない人」は実はほとんどおらず、その実態は「働きたくてもどうすればよいかわからない」「何とかしたいが自分ではどうにもできない」など、基本的には真面目な人が大半のように感じます。

 

そうだとすれば、ただ「働かないおじさん」と批判的に見て、排除や抑え込みをしようとするのは、いい解決策ではありません。

報酬とパフォーマンスのバランスを取る制度に移行しつつ、その人の経験や資質、性格などに配慮した役割を見つけ、周囲からもサポートをしながら最大限の力を発揮してもらえるようにしなければなりません。以前は偉かった相手でも、教える、手伝うといったことが必要でしょう。

 

年下からすると、年長者はいろいろ扱いが面倒かもしれませんが、少子高齢化の環境下では、できるだけ仕事をしてもらわなければなりません。頑固な人、横柄な人、威張る人、腰が重い人、その他いかにも良くない年寄りの振る舞いをする人はいますが、多くは自分も年下を助けて役に立ちたいと思っています。

 

「働かないおじさん」よりは、真面目に働いて「役に立ちたいおじさん」の方が多い気がします。活かす手段はいろいろあるはずです。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿