4月は異動や昇格の季節ですが、ある会社でこんなことがありました。
主任クラスまでの昇格は、担当課長の申請を会社が承認して決まることになっており、その昇格の決裁、承認はほぼ部長権限でおこなっています。正式な発令は4月1日に文書で発表されますが、本人にはその前に内示で昇格する旨を課長から伝え、それに向けた意識づけなどを行うことになっています。
ある社員の昇格申請に対して、部長は担当課長に「最終決定ではないが、ほぼ問題ない」と伝えていたそうですが、その件について、その後は特にやり取りをしていなかったといいます。
発令日の1週間前になり、通常は内示後の本人の様子などを課長が部長に報告してくるそうですが、この時は全くそれがなかったため、部長は担当課長に「来週に正式発令だが、本人の状況はどうなのか」と尋ねたところ、課長は昇格に関しての意識づけどころか本人への内示もしていませんでした。
「最終決定ではないと言われたからその後あらためて通知があるものだと思っており、それがないから昇格は見送られたと思っていた」とのことです。
部長からすれば、社内でこれまで主任昇格が却下された前例はないそうで、それも含めて課長は昇格決定の時期やその後のスケジュールも知っていたはずなのに、申請をしたまま放置していた担当課長の怠慢という認識です。部長は「なぜ確認しにこなかったのか」「昇格申請した当事者で、部下を指導する立場なのに無責任ではないか」と課長を責めました。確かに課長としてやるべきこと、確認すべきことはあったと思います。
これに対して課長は、「正式決定と言われていないから、昇格するかどうかわかりようがない」「きちんと話をしてこなかった部長が悪い」という態度で終始していたそうです。部長の側にも、「これくらい知っているはず」「これくらいはやって当たり前」といった思い込みや決めつけがあって、きちんとコミュニケーションを取っていなかったという問題はあります。
このようなコミュニケーションエラーの問題は、対象となる事柄は違っても、わりと普通にどこの会社でも起こっていることです。
ここでの最も大きな問題は、「お互い思い込みで確認をせずにそのまま放置していた」という点です。昇格のような重要なことは、「空気を読む」や「以心伝心」ではなく、きちんとコミュニケーションを取って確認し合わなければなりません。「これくらいは常識」「普通はわかっているはず」と思い込んで確認しないことで、多くのエラーが起こります。ただ、こういうことは、もうみんなわかっているはずのことです。
ここではもう一つ、「ではなぜ確認しようとしないのか」という問題があります。その理由を私は「当事者意識」にあると考えています。自分の責任ではないと考えているから、そのことを確認しようとしないのです。
前述の例でいえば、部長は担当課長からの申請を追認するだけの役割と思っていて、直接的な対応はすべて課長がやるものだと思っています。
一方で課長の方では、自分が申請まではするけれども決めるのは部長であり、自分はその結果を待っているしかないと考えています。本人の意識づけなど部下育成についても、あくまで本人次第など、自分の責任とまでは思っていないかもしれません。
コミュニケーションにかかわる問題は、「こうした方が良い」「こうするべき」と知っているにもかかわらず、それが実行できていないことがあります。今回は「当事者意識」を挙げましたが、他にも好き嫌いのような感情の問題、ツールやシステムを含めた環境の問題など様々な理由があります。
そこではあるべき形を教えるだけでなく、それが実行できない理由を見つけて改善することや、実行できるような環境作りも考えなければなりません。
本質的な理由を見つけて改善しなければ、コミュニケーションの問題は解決しません。
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