正月恒例のスポーツイベントとして有名な「箱根駅伝」の予選会への参加資格が、再来年の2024年が100回大会ということで、これまで関東の大学だけだったものが、地方大学を含めた全国に拡大するそうです。
多くの大学に出場できるチャンスが生まれることで注目されますが、くわしい話を聞いていると、どうもそれほど簡単なことではないようです。
まず、他の大学駅伝では、1区間の距離が平均7~13キロ程度で区間数が6~8区間なのに対し、箱根駅伝は平均21.7キロが10区間と走る距離と人数が倍増するため、長い距離を走れる選手を大勢育てなくてはならなくなります。練習の量と質を大きく上げる必要がありますが、地方大学ではそれについてこられない選手が多いとみられます。
また、100回大会に出られるのは今の高校3年生までになりますが、有望な高校生はすでに関東の大学に進路が決まっており、さらに「全国化」がその後も継続されるかは決まっていないため、地方大学に人材が集まる見込みは今のところありません。
選手育成に関する時間的な余裕がなく、選手のスカウティング、コーチなどの指導体制作り、費用面のやりくりなどが地方大学では難しく、さらにそれぞれの大会の日程面での問題もあるそうです。
地方大学に参加資格が広がったといっても対応は難しいとの見解が現場の指導者から出ており、「5年前に言ってくれたら・・・」との話もありました。全国の戦力が拮抗するようになるには、継続した取り組みが必要とのことです。
参加資格の拡大によって、「全国の競技レベルを上げる」という意図や目的は素晴らしいですが、実現するためには相応の時間がかかり、すぐには変わらない、変えられないということが見えています。
これは、企業の人事施策に置き換えても、同じことが言えます。
変革のためには「人材」と「組織」が必要で、人材は「獲得」することと「育成」することが必要で、どちらを進めるうえでも「中長期の展望」と「時間」が必要です。
しかし最近は多くの取り組みの中で、この「中長期の展望」と「時間」が特に不足していると感じることがあります。先行きの展望をあまり持たず、目に見えるすぐ目先のことを重視して、とにかく時間をかけずにスピードを求める傾向です。
変化が激しく先が読めない時代なので、短期視点でのスピード重視は理解できることですが、だからといって先の見通しがなくても良いということはありません。また、仕事が早いに越したことはありませんが、最低限の質を保つために必要な時間はあります。
特に人材育成では「○○までに○○を身につけろ」と言っても、必ずできるようになるとは限りません。人が何かを身につけるには、相応の時間を見込んで所定のプロセスを踏み、状況によってそれを見直しながら進めなければなりません。効率的な育成方法は考えなければなりませんが、今日ゼロだったスキルが、翌日100%になることはほぼありません。
取り組みに見合った「中長期の展望」と「時間」がなければ、物事はなかなか変わらないし、変えられない状況に陥ります。特に人材育成など「人」にかかわることでは、スピード感と必要な時間のバランスを取ることが大切でしょう。
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