ある会社のマネージャーですが、「部下が自分の指示に従わない」と言って悩んでいます。
悩んでいるというよりは、上司である自分の指示に従わない部下に対する非難や愚痴という感じの方が強いです。
この会社の企業文化としては、昔ながらの上意下達の雰囲気が強く残っているような会社です。私自身は上司からの指示だからと言って鵜呑みにせず是々非々で向き合って、必要ならば議論して、修正するなり納得するなりした上で物事を進めることが、組織運営の上で好ましいと考えています。
大企業、歴史がある会社、上下関係に厳しい会社では、とにかく上司にチヤホヤし、上司の言うことは受け入れる以外の選択肢がないように見える会社がありますが、私はいろいろな面で怖さを感じます。
最近は様々な事故、不正、隠蔽といったことが見受けられますが、かつて日本経済が昇り調子だった頃には、あまり起こらなかったことのように感じます。私の勝手な思い込みかもしれませんが、ベクトルが下を向き、余裕や余力がなくなってくると、様々な好ましくない出来事が増えてくるのは確かにあると思います。そういう環境下で上司や会社の言いなりになるしかないのは、これからも不幸な出来事が増えていくことが懸念されます。
「指示に従わない」という話を聞いて、私がいつも思い出すので心理学の「選択理論」の話です。
選択理論は「すべての行動は自らの選択である」と考える心理学です。行動を選択するのは本人だけで、相手の行動を直接変えることはできないと考え、「怒る」や「罰する」などの外圧で相手をコントロールするのではなく、相手が納得して行動に移せるように、相手を受け入れて話し合うことが解決につながるとされます。「内発的動機づけ」と言われるものです。
上司から見て、「自分の指示に従っている」と見えるのは、「この指示には従っておこうと本人が決めている」ということになります。
こう考えると、上司からの指示命令に従わないことには、何かしらの理由があります。また、従っているからと言って、必ずしも納得しているわけではないとも言えます。
前述のマネージャーに話を聞くと、やはり部下とのコミュニケーションはあまり良くないようです。また、マネージャー自身も自分のリーダーシップに自信が持てない様子があります。自信がないから自分の指示を権威で押し通そうとして、つい高圧的な姿勢になりがちで、指示命令に関する説明不足も起こりがちになっていました。
その後、このマネージャーは自分の高圧的な姿勢を改め、自分の自信が足りていないことを部下に正直に話し、対等な目線でのコミュニケーションを増やしていったことで、問題は解消されていきました。
一見自分の指示に従っているように見えても、相手がそれを心から納得していることは多くはありません。「とりあえず従っておいた方が損しないだろう」「関係を壊したくないから従っておこう」「仕返しが怖いから従うしかない」など、思っていることはいろいろです。
そして、「自分の指示に従った」のではなく、「この指示には従っておこうと相手が決めた」ということを理解しなければなりません。
権威を振りかざして「自分の指示に従った」と思い込んでいると、いつか大きな問題が起こります。指示に従うかどうかを決めているのは部下であり、その指示に従わないことには理由があることを認識しなければなりません。
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