2013年1月26日土曜日

制度で決めるか、運用に任せるか(2)


私は、人事制度への要望が“具体化”、“緻密化”、“詳細化”というような場合、「それで本当に運用できますか?」と尋ねます。制度の理念とか全体フレーム、実施手順などはしっかり決める必要がありますが、役割基準、職務基準、評価基準など、基準という言われる部分については、何でも細かくというのは実は現実的ではありません。

もしも制度で細かな決め事を作っても、多くの場合はすぐに制度と実態が合わなくなります。制度検討中に事情が変わって、初めから合わないなどという事もあります。それくらい変化が早いということです。(OAソフトの操作スキルを細かく定義したら、新システムが稼働して意味が無くなったなんてこと、あり得ますよね?)
また、部門の違い、職種の違い、役割の違い、その他すべてを網羅して基準を作ろうとすると、膨大なドキュメント量になり、メンテナンスも大変な労力です。見直しと言っても時間がかかり、制度が修正できた頃にはもうすでに時代遅れということもあります。

さらに別の視点として、一度細かい基準を作ると、運用する側である現場は、自分たちなりに考えることを止めてしまいます。人事制度に対して「基準が合わない、使いづらい、だから直せ」という要望が上がり、修正したものが出ても、やっぱり「合わない、使いづらい」の繰り返しになります。“運用”に問題があったとしても、“制度・仕組み”が悪いという意識になります。
「制度が悪い」と言って現場はやる気を失っていくわけですし、自分たちで考えなくなるのは人材育成上良く無いことですから、人事制度の目的とは正反対の方向に進んでしまいます。

ある会社では非常に大ざっぱな仕組みしかないにもかかわらず、個々の社員は評価に対する不満もなくイキイキと働いています。
ある会社は仕組みがないために、その時その時で対応が違ってしまい、社員が不信感を持っています。
マネジメントしづらいという同じ理由で、細かく制度を決めてくれというマネージャーもいれば、自分の裁量が無くなるから細かく決めないでくれというマネージャーもいます。やはり職種や仕事内容、社風や社員のキャラクター、その他いろいろな事情で“制度・仕組み”“運用”適切な比重やバランスは違うということでしょう。

その中で私が唯一言えるのは「制度、仕組みに委ねすぎるとロクな事がない」ということです。そこだけに意識が行って問題の本質を見失い、なおかつ他責の思考に陥りがちになります。
目的に沿って“運用”されてこその“制度・仕組み”です。ここでもやはり、“運用”の大切さということをあらためて考えて頂けると良いと思います。


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