2014年11月24日月曜日

「森林の手入れ」と「組織作り」に共通する世代交代の話


テレビでコメンテーターなども務められている、東京都市大学教授で造園家の涌井史郎氏が講演で話されていたことが印象に残りました。

森林の世代交代という話をされていて、それは「森林で古い木が幅を利かせていると、木の世代交代が行われない」ということでした。
古株の大きな木が枝を張っていると、下まで光が届かないために、新しい木が育たないのだそうです。
この古くて大きな木の枝を適度に剪定することで、下まで光が届くようになり、森林の世代交代ができるようになって、林業で持続的に森林を利用することができるのだそうです。
里山などに適度に人の手を入れることで、多様な生態系を保つことができるという話を聞いたことがありますが、これと同じことのように思います。

涌井氏はこれを企業の組織作りにもあてはめ、実は同じようなことがあるのではないかとおっしゃっていました。世代交代ができていない組織は、古株の社員や幹部社員が権限を独占して、森林でいえば下に届く光にあたる、若手社員や部下に渡すべき権限や業務上の経験をする機会を遮っているのではないかということでした。

私も最近いろいろな企業で、若手社員が育たない、成長が遅いという話を聞くことがあります。「今どきの若者は・・・」的なニュアンスで、若手社員を批判する声も聞きますが、これは一概に本人たちだけの問題ではないように思います。

例えば今の企業の人員構成は、特に大企業ではバブル期などで採用人数が多かった時期に入社した、40代中盤から後半の世代が多くなっています。
本来は自分たちの後進を育成しなければならない立場の人たちですが、組織上のポストの問題や本人たちの能力的な問題などから、相応の立場を与えられていない人たちが大勢います。

それが意味するところは、年令を重ねていっても、若い頃とあまり変わりばえのしない仕事をし続ける人がたくさんいるということです。本来は若手社員たちに経験させてもよい仕事を自分たちがし続けるということは、まさに下に届く光を遮っている状態になりますから、世代交代が滞ってしまうのも当然でしょう。

ただしこれも、いびつな人員構成に原因があるのだとすれば、中高年社員だけに責任を押し付けるのは、少しかわいそうに思います。どの木を切るのか、どの枝を選定するのかは、その時期や方法も含めて、企業全体として慎重に進めていかなければならないことなのだと思います。

これとは別の話で、日本の企業は一種類の木しか育てていない「単純林」のところが多いとおっしゃっていました。異質な人や変わった人は避け、均質化された同じようなタイプの人材を好みますが、それではイノベーションは産まれづらく、グローバル展開を進めていくには、多様性を持った「混交林」が必要だろうということでした。

木の集まりである森林と、人の集まりである組織という違いはありますが、その原理原則には共通した部分が結構あるように感じました。


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