2014年12月29日月曜日

黒田博樹投手の「戻りたい気持ち」と広島カープが作った「戻りたい組織」


ニューヨークヤンキースに在籍していた黒田博樹投手が、年20億円とも言われるメジャー球団のオファーを蹴って、その5分の1程度と言われる条件で広島に復帰することが決まりました。

私は特に広島ファンということではありませんが、黒田投手の決断はすごいことだと思いましたし、いろいろなメディアで「男気がある」との賞賛されていることも、本当にその通りだと思っています。

黒田投手の行動がすばらしいことは間違いありませんが、それ以上に私は、かつて在籍していた選手をこのような気持ちにさせる、広島カープという球団組織に注目しています。

戦力的に強豪とは言えず、資金も決して潤沢ではない地方球団ですが、ドラフトの指名選手が第一志望だったと言っていたり、黒田投手以外にも出戻りの選手がいたりします。無名選手が活躍するという面でも、他球団より目立っている感じがします。

広島カープという組織に、なぜそれほど人を引き付けるだけの魅力があるのか、私にはメディアを通じての断片的な情報しかありませんが、それでもその一端として感じることがあります。

例えば、昨年のドラフト一位指名選手は、「たいしたことなかった頃からずっと見てくれていた」というコメントをしていましたし、黒田投手についても、戻ってくれるならということで、毎年オファーを出し続けていたそうですが、これらのことから感じたのは「相手に対しての誠意を、態度をぶらさずに見せ続ける」ということです。

私が人事の仕事に関わる中で、人の採用、確保というのはどの会社でも大きな課題です。今は思うように人が採れない会社も多いですが、そんな状況にもかかわらず、人がどんどん辞めていく会社、社員を敵に回す会社、その他、社員が居つかないような会社が沢山あります。

そういう会社を見ていて感じるのは、この「人に対する誠意」とは正反対の部分です。
必要以上に駆け引きをしていたり、実態よりも良く見せようとして伝える情報をゆがめていたり、会社の都合だけで一方的な主張をしたり、同じく自分の都合で相手を持ち上げたり見下したりということをします。時と場合によって、相手への振る舞いが違うので、相手からは本音の部分で信用されません。

外資系企業では出戻りがわりと一般的ですが、最近は日本の企業でも、辞めた社員の出戻りを認め、実際に元の会社に出戻る社員の数も増えてきています。
出戻りが成立するためには、お互いの信頼関係がなければなりません。そこには当然、その人が辞めたときの経緯や在籍中の仕事ぶりという要素もありますし、会社が社員に対して行ってきた行動、言動、対応という要素もあります。

会社側からの視点であれば、出戻りを認めないまでも、辞めた人も含めて「この会社で働きたい」と思われるようでなければ、今いる人が定着することは見込めません。それは決して給与など金銭面だけの問題ではありません。

広島カープのような「戻りたい組織」を作るには、「人に対する誠意」というのは、結構重要な要素なのではないかと思います。


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