2015年10月21日水曜日

実は意外に避けられない「主観同士のコミュニケーション」による行き違い



あるステーキ専門のレストランで見かけた光景です。

年配の女性が、店員さんに「このお肉はかたい?」と尋ねています。
店員さんは少し困った様子で、「部位が○○なので、それほどかたい場所ではありませんが・・・」と答えています。

そのお店は、どちらかと言えば安価でステーキを食べさせるところで、値段のわりにおいしいと評判のお店ですが、誰が食べてもやわらかいと感じる、とろけるような霜降りのお肉が出てくることはあり得ません。

いろいろ尋ねていた年配の女性は、その後運ばれてきた料理を一口食べ、また店員さんを呼んでいます。
「かたくないって言ってたのにかたいじゃないの! 私はこれじゃあ食べられないわ」と怒っています。

その様子を見ていた私の感情は、「やわらかい肉が食べたいなら、そもそもこの店に来ることが間違っている」ということで、要は「安い肉を頼んているくせに、かたいとか文句を言うな」という感じでした。

ただ考えてみれば、聞かれていた店員さんも、確かに「これならたぶん大丈夫」というようなことを言っていたので、まったく責任がないとは言えません。
もしも私があの店員さんの立場だったらどうしたか、あの質問に答えるのは、たぶん同じように難しく、確実な対応はそれこそ試食でもさせるくらいしか思いつきません。

同じように、聞いていた女性のことも肯定的に捉えてみて、もし自分がその立場だったと考えてみると、実はそれほど贅沢なものを望んでいた訳ではなく、もしかしたら歯が丈夫ではないかもしれず、できるだけ自分で食べられそうなものを探そうにも、尋ねる言葉は「かたいかどうか」くらいしか思いつきません。

実はこういうケースは、日常生活の中にも結構あるように思います。
会社内の仕事上のことでいえば、
「できるだけ急いでね」
「わかりました」
   ↓
「急いでって言ったのに遅いよ!」
「できるだけ急いでやりましたよ!」
などという感じです。

こういう行き違いが起こるそもそもの原因は、人によって前提条件が違うことを、「かたい」「やわらかい」「できるだけ」などという主観的な表現で、お互いに何となくわかったつもりでやり取りをしたことにあります。

これを避けるためには、お互いに認識のずれが起こらないような、具体的な表現でやり取りをするように心がけるしかありません。「できるだけ急いで」ではなく、「○日の○時までに」といった具合です。あえて今さら言うほどのこともない、基本的なことだろうと思います。

ただ、先ほどのレストランでのやり取りのような、肉のかたさを食べる前からうまく伝える方法は、未だに思いつきません。
「具体的に表現すれば良い」などと簡単に言いますが、その対象によっては、実はかなり難しいことなのかもしれません。

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