米国のグーグルでは、社内で様々な業務に携わる数百のチームがあり、その中には生産性の高いチームもあれば、そうでないところもあるということで、なぜそのような違いが出るのかという原因を解析し、より生産性の高い働き方を提案することを目的とした労働改革プロジェクトが、2012年から活動しているそうです。
そこで得られた結果に関する記事が、とても興味深いものでした。
様々な専門家を集めて分析作業に当たり、初めは人間関係の階層や密度といった「チームワーク」、その後、暗黙のルールや行動基準、チームカルチャーのような「規範」に関することにも注目しましたが、データ分析が得意なグーグルの精鋭をもってしても、目立った共通パターンを見つけることはできませんでした。
唯一見えたのは、「成功の法則性」ということで、成功するチームは何をやっても成功し、失敗するチームは何をやっても失敗するというパターンだったそうです。
初心にかえり、あらためて学術論文などにあたる中から見えてきたのが、「他者への心遣いや同情、あるいは配慮や共感」といったメンタルな要素の重要性で、成功するチームは、これらが非常に上手くいっているのだそうです。
心理学の専門用語では「心理的安全性(psychological safety)」と呼ばれ、チームメンバーの一人ひとりが、そのチームで気兼ねなく発言できる、本来の自分を安心してさらけ出せるといった雰囲気が、押し付けではない暗黙のルールとして、自然に醸成されることが重要だということです。
他者への心遣いや共感、理解力といった「心理的安全性」が醸成されていることが、チームの生産性を高めることにつながるという結論でした。
この結果に関する私の第一印象は、やはり今までの経験でも思い当たることが多々あるということです。
私が経験したことで言えば、あるチームに押しが強くて独断的な性格の人がおり、その人がメンバーとして参加しているうちは業績が良かったものの、リーダーになった途端にチームが分裂状態となり、業績が急降下してしまったということがありました。
彼がメンバーのうちは、同じ立場のメンバー間の意見を代弁していたり、話し合いの中心になったりすることで、意見を言いやすい雰囲気作りに貢献していましたが、リーダーになると独断に走ってメンバーの話を聞かないことが増えていったため、チーム内のコミュニケーションと信頼関係がなくなってしまったということです。
「心理的安全性」という観点で見ると、まさに初めはそれがあったのに、ある人の立場が変わったことで、その雰囲気が消えてしまったということでしょう。
この「心理的安全性」の雰囲気を作り出すことが有用だとわかっても、それを実践することはなかなか難しそうに思います。
相手に対して「遠慮せずに何でも話して」といったところで、相手が心からそう思ってくれるとは限りません。
ただ、「心理的安全性」と作り出すためにできることがあるとすれば、一つだけ思いつくのは「まずリーダー自身が本音をさらけ出すこと」です。
記事で紹介されていたことですが、あまり生産性が上がらないあるチームのリーダーが、自分の健康上の深刻な問題をメンバーに告白したところ、他のメンバーたちも自分のプライベートな事柄を話し出し、その後は本音の議論ができるようになっていったそうです。
もしかすると、本音を聞いたら、あまりにも受け入れがたい内容だったなどということがあるかもしれませんが、それが表に出ることにも意味はあるでしょう。
「心理的安全性」の大切さは、苦労を重ねた検証によって科学的に裏付けられた結論ですが、いかにも人間臭いものだったということが印象的です。
こうやって、あいまいな経験則の中にあったことが明らかになることで、無用な試行錯誤を減らせる効果があります。こういう取り組みが進んでいくのは、好ましいことだと思っています。
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