2017年7月12日水曜日

「残業代ゼロ」のメリットとデメリットを調べてみて思ったこと



専門職で年収の高い人を労働時間の規制から外す「高度プロフェッショナル制度」、いわゆる「残業代ゼロ」制度の導入を巡って、政府が「年間104日以上」の休日確保を義務づける方針であることが明らかになったという報道がありました。

労働組合の全国組織「連合」でも、導入に反対していた当初の方針から、休日数の義務付けや労働時間の上限規制などで、政府に修正を求めていく方針に転換するようです。

私は「時間ではなく成果に見合う賃金」という点では、決して反対ではありませんが、今の議論の流れを見ている限りでは、この動きをあまり肯定的には見ていません。どうしても「長時間労働」や「サービス残業」に対して、合法だというお墨付きを与えるだけになるように思うからです。
「年間休日104日以上」の話などは、「残業上限時間で月100時間」の時と同じく、本当にそんな基準で過重な労働を防ぐという目的に合致するのかと思ってしまいます。相変わらず、ただの条件闘争に陥っている感じがします。

こんな「残業代ゼロ法案」ですが、そのメリット、デメリットして言われていることにどんなことがあるのかを調べてみました。

まず、メリットとして挙げられていたのは、以下のようなものがありました。
・労働者の意識向上と、それに伴う生産性向上が望める。
・無駄な残業代が減って企業収益が改善する。
・早く帰れたり、時間を気にせず仕事が出来たりするので、働き方の自由度が増す。
・成果が出なくても仕事に時間をかけた人の賃金が多いという矛盾が解消される。

ここで、賃金の矛盾解消と残業代削減は、確かにメリットといえるでしょうが、働き方の自由度は、「働き方改革」に伴う他の施策でもすでに実現し始めていますし、意識が変わるだけでそこまで生産性が上がるとも思えません。特に働く側のメリットが、必ずしも多くないという印象です。

一方、デメリットして挙げられていたのは、こんなものがありました。
・合法的に長時間労働、サービス残業が可能になる。(それぞれ拍車がかかる可能性がある)
・成果のハードルが高くなりやすい。
・適用対象の職種や要件が限定的なので、広く一般には導入できない。
・成果が報酬に結び付かないままで適用される可能性がある。

こちらは、会社側のデメリットは「適用対象者が少ない」ということくらいしかなく、他は働く側に起こる得るものがほとんどです。
この制度が問題視されるのは、このメリットが会社側に、デメリットが働く側に、それぞれ偏ってしまっていることが一番大きいのではないでしょうか。

この記事を見ていた時、どなたか一般の方のコメントの中に、「定額を払えば使い放題とは携帯のプランのようだ」というものがありました。

考えてみると、「定額使い放題」は、携帯であれば利用者側、仕事であれば会社側にとって、どちらも共通して使い勝手がよいものです。
ただ、携帯であれば使われる側は機械なので、際限なく使っても何も問題はありませんが、仕事で使われる側は人間なので、働ける時間には限度があり、過労や病気もあります。使われる側の状況はそれぞれ大きく違います。

こういう懸念を減らし、働く側のメリットも増えるような内容に変わっていかなければ、今のままでの制度導入は、よほど強引な進め方でもしない限り、私は無理だと思います。

あらためて、良い形で本質的な議論がされることを望みます。


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