2017年7月21日金曜日

ルールを知らないとプレーできないのは「スポーツ」も「仕事」も同じ



ある研修の講義資料の中に、「野球で言えば・・・」というたとえ話が出ていました。自己犠牲のたとえで「送りバント」の話が挙げられていました。

ただこの「野球で言えば・・・」は、今の20代、30代には、かなりの比率で通じなくなっています。
ある調査によれば、「野球のルールがわからない」という人は、50代であれば、男性で9.0%、女性で33.1%とのことでしたが、これが30代になると、男性の23.5%に女性の55.2%、20代ではさらに増えて、男性の26.7%、女性で57.3%が「ルールを知らない」と答えているそうです。

いつでも野球ができるような場所が減り、テレビ放送でも見る機会が少なくなったというようなことがあるようで、さらに「ホームを踏んだら点が入るのはわかるが、それまでの過程がわからない」「ルールが難しくて予備知識がないと理解が難しい」など、ルールの複雑さに関する声もありました。

野球の場合、他のスポーツと比べて複雑なルールが世界的な普及にはネックになっているという話を聞いたこともあるので、同じようなことが今の日本の若い世代でも起こっているということでしょう。
当然ですが、ルールを知らなければプレーはできません。普及のためには、まずルールを知ってもらうということが必要でしょう。

少し話が変わって、労働組合の統一組織である「連合」が最近おこなったアンケート調査で、「働く人の4割以上は、会社が残業を命じるには労使協定(36協定)が必要なことを知らない」という話がありました。
20~65歳までの自営業やアルバイトを除く働き手1000人に、36協定について尋ねたところ、「知っている」と答えたのは56・5%、「知らない」は43・5%だったとのことです。
長時間労働への関心の高まりで、知っている人の比率は上がってきたが、今後も周知を進める必要があるとのことです。

私がコンサルティングの現場で、いろいろな企業の方々に接していると、これは経営者、従業員を問わず、「法律を知らなかった」「ルールを知らなかった」という話は、意外にたくさんあります。
中に「知っていたけどやっていない」という確信犯はいますが、本当に心の底から全く知らなかったという人にも数多く出会います。

ある会社では、有給付与や残業割増のルールが、まったく法律に則っておらず、そのことを社長に尋ねると、「そんな話は全く知らなかった」「初めて聞いた」といいます。真面目で誠実な人で、他のルールはきっちり守っているので、たぶん本当に知らなかったのだと思います。
設立から30年以上が経っているような歴史がある会社で、当然ですがこの社長もベテラン経営者といってよい人です。そんなプロなのに、わりと当たり前と思えるルールが抜け落ちてしまっていました。

また、社員からこういう指摘をされたことは一度もないそうで、社員に聞いても同じように「知らなかった」といいます。もしかすると気づいていた人はいるのかもしれませんが、少なくとも声をあげた人は今までいなかったということで、実際に知らなかったという人がほとんどだったのは確かでしょう。

社長にはまったく悪気がなく、しかし結果的には相当長い期間法律に合っていないルール違反を続けていて、働いている社員たちも、それがルール違反だったとは誰も知らなかったということです。

しかし、これを仕方がないことと片付けてしまうのはちょっと問題です。

スポーツであれば、ルールを知らなければ競技が成り立たず、そもそもプレーすること自体ができません。プレーしたければルールを覚えなければ始まりません。

これは仕事の場合も同じはずですが、こちらの方は「知らずにプレーしている」という状態の人が、ずいぶんたくさんいるということです。
これは決して違反を糾弾しろとか、権利主張しろとか、そういうことばかりではありません。一定のルールのもとでの競争があるから企業活動が成り立つわけですし、違うルールなのに売上が上がったとか利益が出たといっても、同じ尺度で比べられるものではありません。企業の対外的な評価にもかかわることです。

また、違ったルールの中で利益構造ができあがってしまうと、簡単に直すことができません。「法律通りにやっていたら会社がつぶれる!」などという経営者がいますが、やはりこれは本末転倒だと思います。

スポーツでも仕事でも、やっぱりルールを知らなければプレーすることはできません。プレーしたいのに、仕事をしたいのにルールを知らないのであれば、それを知る努力をする必要があると思います。


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