お付き合いしているある会社の社長が、ちょっとイライラしながら「もう社員には期待しない!」などとおっしゃいます。「期待しても裏切られるなら期待しない方がマシ」ということらしいです。
何があったのかと話を聞くと、そう言いたくなってしまう気持ちもわからなくはないようなことです。ちなみにこの社長は、社員には常に感謝の気持ちを持っていて、大事に扱おうとする人なので、余計にそう思ってしまったのかもしれません。
いろいろ話しているうちに社長の気持ちは少しずつ元に戻り、「まあもう少し根気よくやってみましょう」とのことです。「そんな簡単に他人が思い通りに動くわけはないですよね」ともおっしゃいます。
こんな話をしながら思ったのは、経営者、上司、部下、社員が、お互いを指して「思った通りに動かない」「期待と違う」という不満が、どこの会社に行っても必ずあるということです。
ここであらためて考えてみると、そもそも「他人が自分の期待通りに動く」などということは、それほど簡単なことでなく、またそんなにいつもあることでもありません。
こちらの期待を相手が理解し、それなりに共感と納得をして初めて期待通りに動き始め、それがこちらの満足できる結果になるまでには多少の時間が必要でしょう。そして、「こちらからの期待」の7から8割は、こんなにスムーズにはいかないものです。
だからといって、他人に期待することは無駄かというと、そう簡単に割り切ることは良くありません。
例えば、日常の仕事の中での指示命令や依頼といったことは、少し言い換えると「相手に対してこちらの“期待”を伝え、それを実行してもらうこと」です。その結果はこちらが思い通りのこともそうでないこともあるでしょう。
たぶん思い通りでないことも多いはずですから、またあらためて“期待”を伝えてやり直してもらい、そんなことを続けているうちに、少しずつこちらの“期待”に近づいてきます。そのスピードが速い人も遅い人も、中にはいつまでたっても近づいてこない人もいるでしょう。
「期待通りにならない」という不満は、こちらからの期待に近づいてくるスピードが遅い人や近づいて来ない人に対する批判ですが、そもそもの話として、それはそういうものだということです。
しかし、「だから他人には期待しない」となると、この日常業務にもあるような一連のやり取りを放棄することになります。すべて自分だけでこなせるならばそれでも良いかもしれませんが、それでは成り立たないことがほとんどでしょう。
つまり、自分の意志、要望、依頼を伝えるためには、他人に「期待する」ということが必要であり、その一方、他人はそう簡単に思い通りにならないということで言えば、そのことで得られる結果には「期待しない」ということが必要だということです。
「期待する」けど「期待しない」・・・。
どこか矛盾していて難しいことですが、どうもやらなければいけないことのようです。
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