2018年12月10日月曜日

「特別」でない会社はないが、「原理原則」が当てはまらない会社もない


人事や組織の支援をしていると、主に社長や役員、管理職の方からこんなことを言われることがあります。「うちの会社、業界、職種は“特別だから”」ということです。

確かに会社の特徴は10社あれば10通り、どんな会社もみんな特別です。似ている会社はあっても、まったく同じにはなりません。特別でない会社があるとすれば、それは「何も特徴がない会社」となりますが、そんな会社はあるはずがないでしょう。
謙遜や少し卑下するニュアンスを含んで、「うちは特徴がない会社」と言われることはありますが、それは商品やサービスの競争力などの面からそう言っているだけで、良いことも良くないことも、何かしらの特徴はどんな会社にもあります。社風も組織の成り立ちもみんな違いますから、「特別」でない会社はありません。
そういう意味では「うちは特別だから」というのは、間違いありません。

ただ、「特別だから」と言われる場面の多くは、例えば一般論であったり、他社との比較であったり事例であったり、そこで示されたものを、自分たちの会社に受け入れられない、もしくは受け入れたくないと思った時です。「うちの仕事は特別」「うちの業界は特別」「うちの会社は特別」といい、だから「その事例は当てはまらない」「うちには合わない」「それはできない」となります。
確かに事例や一般論を鵜呑みにしてもうまくいくはずがなく、「合わない」「当てはまらない」が正しい面もあります。他の会社でうまくいったから、効果があったからといって真似をして、結果的に大失敗という会社は、私もたくさん見てきました。

特に人事や組織作りの中での一般論は、「これが絶対」というものはそれほど多くありません。ある会社の成功事例をそのまま持ちこんでも、同じような成功を得られるとは限りません。
しかし、人事・組織の世界でいわれる一般論や事例のほとんどは、「必ずうまくいくとは限らないが、その考え方に沿ってやれば、7割くらいの確率で効果がある」というもので、わたしはこれを一種の「原理原則」と捉えています。「セオリー(定石)」と言い換えても良いかもしれません。

例えば、スポーツの世界であれば、人によって体格も体力も性格も違いますが、早く走ろう、遠くまで投げよう、高く飛ぼうなどと思ったとき、そのやり方には一定の原理原則があります。「こうやった方がおおむね効率が良い」「目標に到達できる確率が高い」というセオリーです。
早く走るために、後ろ向きや四つんばいで走る人はいません。競技のルールが変わったり、道具が進化したりする中では、セオリーも変わっていきますが、ある一定のより良い方法、すなわち「原理原則」は必ず存在します。

同じように、人事や組織作りの中でも、この「原理原則」「セオリー」があります。環境が違っても、その考え方に則った施策をとれば、良い方向に向く確率が高い、マイナスの働くリスクが低いというものです。その中には業界や業種、職種にかかわらず当てはまるような普遍的なものもあります。
どんな業態、業種でも、働いているのは人間ですから、認められて褒められればうれしいですし、その方がやる気が出ます。理不尽な強制や不公平な扱いがプラスに作用することはありません。認められて悲しい人や、不公平がうれしい人はどんな特別な会社であっても存在しないでしょう。

このように、「特別」でない会社はない一方で、「原理原則」が当てはまらない会社もありません。
一般論と言われるものは、当てはまるケースが多いなど、それが一般化された理由があります。自分たちが「特別だ」というのは、そこから目を背ける理由にはなりません。
「できない」「合わない」と安易に拒否せず、まずは一般論の「原理原則」を受け入れて見て、それを基本に自社なりのアレンジを加えていくことが、人事・組織の改革には早道だと思います。


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