最近は転職がごく普通のことになり、その結果として「社員の定着」という課題がどこに会社にもあります。
明らかに社員を粗末に扱っているブラックな会社に社員が定着しないのは当然ですが、ほとんどの会社は真面目に社員と向き合って、お互いのより良い関係が続けられるように考えています。
私が見ていて、本当に最高の良い環境で仕事をしているように見える社員でも、次のステージを目指して辞めていってしまうこともありますから、「社員の定着」というのは本当に難しいテーマです。考えてみれば、日本を代表するような超一流企業でも辞める人は辞めますから、こればかりは100%の正解はありません。
そんな人材流動性が高まっている昨今ですが、最近いくつかの会社で「ずっとこの会社で働きたい」という社員の生の声を、思いのほか多くの人から聞くことがありました。やはり年齢は多少高めの人たちが多かったので、転職自体が難しいという年齢的な事情はあるでしょうが、中にはまだ20代の若い社員たちもいました。次を目指して辞めていくというような考え方とは対極にいる人たちです。
そういう人たちを見ていて、あくまで私の主観ですが、共通して思った印象があります。
まず、一言でいうと「みんないい人」ということです。もちろん多少癖のある人はいますが、他人との接し方としては穏やかな感じです。悪い見方をすれば「競争心がない」「積極性が足りない」「意欲が見えない」などとなるのかもしれません。
もう一つは「良い意味で普通の人」ということです。誰が見ても優秀とか、すごい実績や成果があるとか、そういう人たちではありません。すごく高い評価を受けているわけではありませんが、かといって全然評価されていないということでもなく、本当に普通の人としか言いようがありません。
ただ、基本的に真面目で、少なくとも「自分の仕事はきちんとこなす」という安心感を持って見ていられる人たちです。
最近何人かの社長と話していたことですが、「決められたことをきちんと普通にこなしてくれる社員が、実は一番有難い」という話がありました。自分の右腕や優秀なリーダーは確かにいてほしいし、いてくれれば良いことは間違いありませんが、そういう高い能力を持った人には様々な可能性がありますし、本人もそのことを自覚しています。それを別の場所でも試したいと思うのは当然のことで、「ずっとこの会社で働きたい」とまでにはなかなかなりません。
その一方、実際に会社の仕事の多くの部分を担ってくれているのは、真面目にコツコツと「普通」に働いてくれている社員たちです。多少のミスや失敗があっても、そういうことも含めてコンスタントに役割を果たしてくれます。当たり前のことを当たり前にこなしているだけかもしれませんが、会社にとってはそれが一番大事なことです。
そんな人たちが「ずっとこの会社で働きたい」と言ってくれるのだとすれば、実はそれが会社にとって一番嬉しく有難いことなのです。
競争心や積極性、上昇志向や個人の頑張りは、仕事をしていくうえで必要な場面はありますが、それが過ぎると他人を蹴落としたり、排除したりしてしまうことにつながりかねません。それではより良い仕事環境は長続きすることができません。
優秀な人たちばかりに注目するのではなく、ごく普通の社員たちから「ずっとこの会社で働きたい」といってもらえるような会社にするのが、実は一番大事なことではないでしょうか。
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