2020年12月7日月曜日

変化や緊急時に強い「分散型リーダーシップ」という話

最近「分散型リーダーシップ」について、書かれた記事を目にすることがありました。

このコロナ禍に関連してのものですが、今のように変化が激しく、なおかつ非常に複雑な要素が絡み合った環境下では、1人のリーダーがすべてをやりくりできる状況ではなく、こういう中で求められるのはリーダーが自分自身の足りないところを知り、周囲の人たちに協力を仰いで事態を乗り切る「分散型リーダーシップ」が重要だという話です。

「分散型リーダーシップ」のような機敏さがある管理モデルを持った企業が、この環境下では落ち込みを最小限に抑えて、さらに非常に回復力もある組織だといっています。「自律型組織」とも共通するニュアンスのように思いますが、私がいくつかの企業の様子を見ている中でも同じようなことを感じます。

 

私がこの「分散型リーダーシップ」という言葉を知ったのは、東日本大震災の直後のことなので、もう10年近く前になります。

それこそ津波が迫っているような突発事態、緊急事態の場合には、とにかく一刻も早く避難を開始することが重要ですが、こういう時に組織階層を通じた情報収集やトップレベルの意思決定、組織階層を通じた上意下達のプロセスを待っていては、生死を分ける結果になってしまう恐れがあります。

実際に迅速な避難ができた事例では、例えばある学校では全員の点呼が終わった段階で、それぞれの生徒が自分達の判断で避難を始めたということがあったそうです。これは組織の末端にリーダーシップがあって、それぞれの現場で各自がリーダーとして意思決定し、すぐに行動した結果だということですが、そういう行動ができるようにするための事前準備は、ずっと徹底しておこなわれていたそうです。

全員がリーダーとして行動するような「分散型リーダーシップ」という意識付けは、特に緊急事態では有効だという話でした。

 

今も一種の緊急事態だと思いますが、いろいろな動きを見ていると、どうもこの「分散型リーダーシップ」はあまり機能していないように思います。

自分たちに見えている、もしくは都合が良い一部の情報だけで判断していたり、一見リーダーシップを発揮していないように見える現場への丸投げも、多少の責任回避を含めたトップダウンの命令だと考えれば、これも一部リーダーが決めたことによるものです。本当の意味で末端にリーダーシップを任せている「分散型リーダーシップ」とは少し違うように思います。

 

トップダウンとボトムアップの適切なバランスを判断するのは、なかなか難しいことです。組織文化や属している人の能力も関係して、その割合は組織によって違うでしょう。効率が良いとされる組織は判断のスピードが速いですが、そのためには末端まで業務権限の委譲がされていて、さらにそこでおこなわれる判断内容が経営者のそれと食い違わないことです。ただ、現実的にそこまでの意識統一をすることは難しいです。

 

しかし、ここ最近の社会情勢のような緊急事態や環境変化への対応を考えると、それぞれの現場で個人レベルが自分で判断して行動する「分散型リーダーシップ」は、これから一層重要になってくると考えられます。

組織を変革するリーダーシップはこれまで以上に強く求められていますが、そこでのリーダーは自分の得手不得手や長所短所を踏まえて、足りないところを周囲に補って協力してもらわなければ、適切なリーダーシップは発揮できません。補い合える人材の育成も重要になるでしょう。

 

あらためて目にした「分散型リーダーシップ」という言葉から、考えさせられることがいろいろあります。少なくとも一部でリーダーシップを独占しているような組織では、もう時代に合わなくなってきているのではないでしょうか。

 

 

0 件のコメント:

コメントを投稿