私の周りで「仕事ができる」と言われる人たちの共通点として、決めること、行動することが「早い」ということがあります。
決して拙速ということはなく、判断、決断しなければならないタイムリミットをしっかり押さえ、その段階で手元にあるすべての情報をもとに、先行きの予測をしたうえで判断、決断を下します。そして決めた後の行動が早いです。
決めたことを押し通す場合も、反対に朝令暮改と言われてしまうような翻意をする場合もありますが、いずれもその時の状況によるタイムリミットと将来予測に基づくものです。
「素早い判断、決断」と「行動の早さ」は、いろいろなところで大事だと言われ、意識している人は多いと思いますが、実践するのはなかなか難しいものです。それでも、私の周りは経営者や事業者が多く、基本的に「自分が決めなければならない」という意識が強い人たちなので、意思決定や行動は早いと感じることが多いです。
あくまで私が感じる傾向ですが、経営者や事業者よりは、企業勤務の人たちの方が、「判断を待つ」「様子を見る」という選択をする比率が多い感じがします。会社で仕事をしている中での一番身近な意思決定者は直属の上司ですが、この人たちが自分で判断することに慎重だったり、判断を先送りしたりする様子は、もちろん個人差はありますがよく目にすることです。
人事考課に「決断力」などという評価項目があったり、それをテーマにした教育や研修が実施されたりしますが、すぐに何かが変わるというものではなく、実践できるようになるまでには時間がかかります。
この様子を見ていて思うのは、「自分で決めない」と批判されるマネージャーたちの能力が決して低いわけではなく、「判断を待つ」「様子を見る」のは、暗黙のうちにそれが通常の行動として刷り込まれている場合が多いということです。
結果論で責められたり、根回しが足りないと怒られたり、納得できないダメ出しが続いて行動が始められないなど、自分の素早い判断や行動で損をしたような経験が数多くあり、そこから徐々に判断、決断、行動のスピードが鈍っていき、いつか「自分ではできるだけ決めない」などとなっています。
実際、決めるのが早い経営者が、同じく早い判断を下した自分の部下に、「それではダメ」「確認が足りない」などと叱責する姿を見たことがありますが、そういう経営者は「自分で決めなければ気が済まない」というところもあり、その経営者の周囲の人たちは、みんな自分で決めることを放棄しているようなことがあります。「早い決断が大事」と言っている張本人が、全体の決断と行動を遅らせていることになります。
変化が激しい今の時代、意思決定と行動のスピード感が重要なことは間違いありません。しかし、特に組織の中においては、これを阻害するような環境があちこちに散らばっていることが、往々にして見受けられます。
意思決定を避けたり遅くなったりする理由には、本人の決断力などの能力的な問題だけでなく、組織風土をはじめとした環境にも原因があることは、認識しなければなりません。
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