2022年3月14日月曜日

「高い業績を上げる人」が必ずしもマネージャーには向かないこと

たぶんよくある話ですが、つい最近もある会社で、高業績を評価されて昇格したマネージャーが、部下たちから総スカンの状況に陥って、組織が回らなくなっているという相談がありました。

「名選手、必ずしも名監督にあらず」とはずいぶん昔から言われていて、誰もが理解していることだと思いますが、同じような見込み違いは多くの会社で起こっています。会社の仕組みとして、やはり高業績の者は社内で高く評価され、それに伴って給料は上がり、そのままマネージャーほか管理職に抜擢されるという流れは、なかなか変えられないということでしょう。

また、多くの人の心のどこかで「業績を上げる能力があれば管理能力もあるだろう」と思っている節があり、中には両立できる人もいるため、「マネジメントに不向きなマネージャー」が相変わらず生み出されているように思います。

 

先日ある社長との雑談の中で、「功のあった人には禄を与え、能力のある人には位を与えよ」をいう言葉が話題になりました。明治維新の元勲である西郷隆盛の名言(※最後に注釈あり)です。

禄とは仕えている者に与える金品で、この言葉は「功績があった者には報酬で報いて、能力のある人間には地位を与えることが大切だ」との意味です。逆から見れば、「功績がない者に報酬を与えることや、能力がない者に地位を与えることは良くない」とも解釈できます。

 

「功績がない者に報酬を与える」というのは、例えば年功賃金などが当てはまりそうですが、最近はずいぶん少なくなっています。

一方、「能力がない者に地位を与える」というのは、実は案外多く見受けられます。ここでいう能力とは、あくまで「管理する能力」「マネジメント力」であり、例えば売上を上げる「営業能力」などとは違います。

例えば、高い営業能力を駆使して上げた高成績は、本来「禄(報酬)」を与えて対応するものですが、この営業能力と管理能力を混同して、「地位」も与えてしまうことで問題が起こります。要は「地位」を与えるうえで必要な能力は、業績を上げる能力とは異なるということです。

 

ある営業系の企業では、社員の要望でインセンティブ比率が非常に高い給与体系を導入しています。以前プロセス評価を含めた仕組みを導入したものの、社員からはすこぶる不評で、「売上、利益の数字で評価されるのが結局一番公平」という声の大きさから、今の体系になったそうです。

その結果、社長よりも給料が高い社員も出てきてしまい、それはそれで問題ではあるものの、そのままの報酬を維持しているそうです。ただ、この社員を役員に抜擢することがあるかというと、社長は「それは絶対にない」と断言しています。その理由は「営業力と経営能力は全く違うから」とのことでした。

 

まさに西郷隆盛の言葉を実践しているわけですが、こういう会社はそれほど多くありません。自分で成果を出す能力とチームで成果を出す能力とは違うことが分かっているのに、高業績で高評価だからと昇進させてしまい、その結果メンバーは力を発揮できずにチーム成果が上げられない、さらにメンバーとの間に軋轢を生むといった悪循環が起こっています。

 

「マネジメントに向かないマネージャー」が生まれる理由は、みんなが知っているのにそれがなかなか変えられません。見込み違いがあるのは仕方がないとして、能力がない者にそのまま地位を与え続けるのは大いに問題があります。西郷隆盛の言葉は、そのことの重要性に気づかせてくれます。

 

昔の人の名言には、気づきを得られて参考になるものが数多くあります。

 

※注釈 

お読みいただいた方から、引用した言葉について、正しくは「功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ」で記事の主旨とは少々異なる意味であり、別に「功には禄を、能には職を」という家康の言葉があるとご指摘を頂きました。私を含めた当事者に言葉の誤認識や混同があったようで、申し訳ございません。

 現場のエピソードとしてはこの記事のままの話でしたので修正はしませんが、引用は正確ではない旨をお含み頂いたうえでお読みいただければ幸いです。 

 

 

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