ある新聞に、「若者の才能を見逃さない」という、プロ野球スカウト部長のインタビュー記事が目に留まりました。日本ハムファイターズのGM補佐兼スカウト部長である大渕隆氏へのインタビューです。
この方は、大谷翔平選手をドラフト指名した際に、本人は当初直接のメジャー入りを目指していたものを、自身の能力を最大限に生かすには、まず日本球界でプレーすることが適切だという客観的なデータを示して翻意させたというエピソードを持っています。
記事にはいくつもの示唆に富んだ内容がありましたが、私が一番共感したのは、「“見えないもの”に焦点を当てなければ、自分たちの仕事に意味はない」という言葉です。
球速や身体能力などの見えるデータは、もちろん評価の確認に使いますが、そこを重視しすぎるとうまくいかないことが多いといいます。大事なのは数字にならない「考える力」や「強い思い」などの「見えないもの」だと言っています。
いくつか挙げられていたポイントには、
・人間同士なので伝わってくる第一印象を大事にする。
・ピンチになった時にその人の本質が出やすい。
・ユニフォームの着こなしやグラブの手入れ、野球ノートの書き方なども材料になる。
といったものがありましたが、中でも「企業の人は“20分の採用面接では何もわからない”などというけれど、むしろ1回の方が良い時もある」という話は、私も同じことを思いながら実践、指導してきた経験があるので、とても共感するところがありました。
「一つの常識というフィルターにかけたらふるい落とされる者がたくさん出るから、私たちは評価基準や引き出しを何通りも持たなければならない」といい、そうでなければ大谷選手の二刀流もなかったかもしれないと言っています。
「若者を枠にはめるのではなく、その人しか持っていない才能を開花させなければならない」
「“組織の常識”というフィルターにかけて才能を見逃していることが、どんな組織のもあるのではないか」と締めくくられていました。
私がいつも怖いと思っている言葉の一つに、「常識」というものがあります。人を枠にはめる典型的な言葉だからです。「そんなの常識」「これくらい常識」「当たり前の常識」など、いろいろな言い方がされますが、そもそも「常識」というのは、10人いればほぼ10通りに分かれる多様なものです。
パワハラにあたるかもしれないためか、最近は見かけませんが、以前は上司が部下に、「これくらいのことが常識でわからないのか」などと叱責していることがありました。当時はそれで通用していましたが、そもそも常識は人それぞれなので、きちんと言葉にしていないなら、本来はわかるわけがありません。
そういう決めつけによって排除してしまった才能が数多くあったのだとすれば、それはとてももったいないことです。
「その人しか持っていない才能を開花させなければならない」ということは、組織で採用や育成に関わる人は、十分認識しておかなければならないと思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿