ワールドベースボールクラシック(WBC)は、日本が優勝して幕を閉じました。私は最近あまり野球を見ていませんでしたが、久しぶりにレベルが高い良いゲームを見て、あらためて野球の面白さを感じました。
大会が終わり、監督がどんな考え方で、どんなアプローチをしてチーム作りを進めていったかというエピソードもいろいろ聞こえてきて、「選手を信頼する」という姿勢が成功要因として挙げられています。
メジャー組が中心になって、適度なリラックスと一体感が両立するような、良い空気感をチームにもたらしていたと思いますが、それを必ずしも良しとしない意見もあったという話を聞きました。
特に直前の国内での練習試合であまり調子が上がっていなかったころに、チーム内のコーチ陣などからも「雰囲気が緩すぎる」「締め直さないと勝てない」「このまま選手任せでいいのか」という声があったそうです。
監督は「選手に任せるところはしっかり任せる。選手の力を発揮させられれば勝ち切れる」と言って、そのままの方針を貫いた形で結果を出しましたが、チーム内外には規律や体育会気質を好む人間もいて、この方針には賛否があったようです。
WBCの代表チームとは、異なるアプローチをした例で思い出すのは、かつてラグビー日本代表を率いたエディー・ジョーンズ氏です。選手とのあつれきを恐れず、厳しい言動と自らの率先垂範で選手を追い込み、常に緊張感を持続させて、負け癖がついたチームの意識変革を進めて結果を出しました。
監督から選手への信頼やリスペクトはあったでしょうが、その関係性は常に緊張感を伴うもので、「厳しすぎる」とは言われても、「ゆるんでいる」といわれることは一切なかったでしょう。
こうやって見ると、チームの雰囲気づくりというのは正解がなく、チームが置かれた状況によって様々だと言うことができますが、一つだけ気になるのは、そもそも「ゆるんだ雰囲気」とはどんな状態を指しているのかということです。
例えば、軍隊のように「上からの命令は絶対」という組織をゆるいということはないでしょうが、上からのいじめやパワハラのようなことがおこなわれていれば、そのチームの規律は「ゆるんでいる」といえます。
一方で、上下関係が「ゆるんだ雰囲気」だったとしても、上下に関係なく、その時々で最善の指示や意見がお互いに交わされるような状況であれば、建設的で生産性も高まることが期待でき、決して「ゆるんだ雰囲気」のチームではありません。
今回の野球と、以前のラグビーでのアプローチの違いは、選手の意識改革が必要だったか否かによるものだと思います。みんなプロ意識が高い大人の選手たちにあえて意識改革を求める必要はなく、一方負け癖がついていて甘さがあるプロ意識が低い選手たちには、厳しさを求めて意識改革をしなければ目標達成はできなかったという違いです。ただし、ここでの厳しさとは、接し方や威圧感、精神論のような厳しさではなく、目標設定と取り組みプロセスに関する厳しさです。
何が「ゆるんだ雰囲気」にあたるかは、メンバーがどのくらいのレベルに達しているかで異なります。自己管理ができて意識が高いプロフェッショナルならば、リラックスはしてもゆるむことはなく、まだ未熟さがあるメンバーであれば、規律やルールで枠にはめて管理することも必要です。どちらの場合も適正なバランスを取る必要があり、それを見極めるリーダーの力量が問われます。
どちらかというと、規律を好んで枠にはめたがるリーダーが多いと感じる日本では、それが行き過ぎてメンバーの力を発揮させられないことが大いにあると感じます。指導者やリーダーたちの意識改革も、合わせて必要かもしれません。
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