人手不足と採用難の環境下であることから、退職防止、定着促進に取り組む企業が数多くあります。私も企業の組織作りを支援する立場なので、そのための人事施策には頻繁に関わります。
社員にとって様々な意味で「良い会社」であれば、そんなに簡単に人は辞めません。
入社間もない人の早期離職が問題になることがありますが、初めからすぐ辞めるつもりで入社する人はいません。そういう決断をしなければならないほどのミスマッチや認識違いがあったということですが、こういうことを本人の能力不足や順応性不足として、自分たちのことはあまり反省しない会社が相変わらずあります。やはりこれでは「良い会社」とは言えない訳で、いろいろ真面目に考え直さなければ、いつか行き詰まってしまう時が来るでしょう。
しかし、もし「良い会社」だったとしても、退職を完全に防ぐことはできません。ある調査によれば、勤務先を退職した経験のある人は20代で7割弱、40代では9割以上となっており、理由はともかく退職というのは誰でも普通に経験していることです。
今はどんな大企業でも、優良と言われる企業でも、ずっと安定した形で成長、存在し続けることが難しい時代になりました。そんな中で最近よく言われるのが、「一つの会社で働き続けるデメリット」という話です。
良く挙げられるデメリットとしては、
・スキルアップがしにくい
・仕事や人間関係での視野が狭くなりがちである
・環境変化に適応しづらい
・収入が上がりにくい
・自分の市場価値、社外価値が低くなる
などがあります。
要は安定していることによって起こってくるマイナスの側面といえ、自分のキャリアに関して会社への依存度が高いということもできるでしょう。
しかし、だからと言ってみんながみんな、転職すべきと推奨するような話でもありません。
自分なりに意識すれば、別に転職しなくても、このデメリットを回避する方法はたくさん考えられます。
「スキルアップ」に関しては、時代の変化に対応するために、新しい知識やスキルを学ぶ「リスキリング」が話題になるように、会社から離れて自分なりに学ぶという方法があります。
「視野を広げる」ということでは、社外のコミュニティに参加する、副業などの形で会社以外のビジネスに関わるなどの方法が考えられます。
「自分の市場価値を知る」という意味では、その気がなくてもあえて転職活動をしてみて、自分が他社からどのように評価されるかを聞くといった方法もあります。
大きな会社であれば、社内異動によって全く別の仕事を経験する機会を得て、これらのデメリットを解消することもできるでしょう。
一つの会社で働き続けることには、会社からの信用、職場環境や人間関係、収入の安定などのメリットがあります。このメリットを活かしながら、デメリットを減らしていくという考え方もできます。
いずれにしても、会社に過度に依存せず、環境変化への適応力を身につけておくことだけは、確実に必要な取り組みだと思います。
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