2023年6月12日月曜日

「社員同士の距離感」の遠さ近さで見えること

 企業の人事支援をいろいろな会社でおこなっていると、その会社の「社員同士の距離感」がいつも目につきます。仕事柄で結構緻密に観察しているということもあります。

ここで言っている距離感とは、お互いの心理的な距離のことで、親近感と言い換えてもいいかもしれませんし、仲の良さとも似ているかもしれません。

 

もうおわかりの通り、業績が良い、働きやすい、社員が辞めないという好循環の会社は、この「社員同士の距離感」の平均値が近いことが多いです。あくまで平均値なので、プライベートでは会社の人と付き合わない、社員との関係は仕事上だけという人もいますが、それでも仕事中の会話の頻度や接点の数は、距離感の近い会社の方が間違いなく多いように見えます。

 

社員同士の関係には、「プライベートも付き合う友人」のような濃い関係から、「たまには仕事以外で食事したりする」「一緒に仕事をしたことがある」「会社ではよく話す」「面識はあって会話したことがある」などの中間的な関係、さらに「存在だけ知っている」「面識がない」という希薄な関係までのレベルがあります。

「平均値が近い」と言っている意味は、全体的な関係性のレベルが高め、濃いめの方にシフトしているということです。

 

距離感が近い理由は、あまり一概に言える感じではありません。別に年中飲み会やパーティーをやっているわけではなく、趣味や嗜好が似た人ばかりを集めているわけでもありません。

年齢の近い人が多い、面倒見の良い人がいる、公私ともにイベントが多い、情報共有意識が高い、気軽に雑談できる雰囲気、長時間労働があまりなく業務量がわりと適正、上下関係が緩やか、プロジェクト制やチームでいろいろな人と仕事をするなど、本当にいろいろな要因があり、それらが総合した結果としてお互いの距離感が近づいているようです。意図的に取り組んでいることも自然にそうなっていることもあり、会社それぞれで事情は違います。仮に別のところで同じような取り組みをしても、確実な再現性がある感じではありません。

 

そんな中でも共通しているのは、とにかくコミュニケーションの機会が多いことです。仕事の話も、趣味や遊びなどプライベートな話も、対面、電話、メール、チャット、その他いろいろな方法でコミュニケーションを取り合っています。

仕組み作りや雰囲気づくり、個人的な気遣いなどはありますが、とにかく疎遠な人や孤立した人、事情がわからず戸惑う「浦島太郎」的な人がほとんどいません。

 

逆に距離感が遠い会社を見ていると、仕事に追われて余裕がない、個人ベースで縦割りの業務分担、お互いの面識が薄いまたはお互いを知らない、上下関係がきつい、情報共有の意識が低いなど、コミュニケーションがしにくい、もしくは不要となってしまう要因がいくつもあります。

社員同士はそれに慣れているのであまり問題とは思っていませんが、協力し合えば簡単にできることを一部で抱え込んでいたり、情報の偏りがあったり、相談しづらさや頼みづらさがあったり、小さな不都合、非効率が数々積み重なっています。

 

全員が全員親密である必要はなく、もちろん多様性は重要ですが、一方で、気心の知れた者同士の方が、仕事はスムーズに進みやすく、結果も良いことが多いでしょう。

 

自社の「社員同士の距離感」は、当たり前になっていて気づきにくいものですが、あらためて一度問い直してみて、問題があると感じたら何か取り組んでみることも必要ではないでしょうか。

 

 

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