2013年5月10日金曜日

指示命令をされる側の気持ち


ある大企業で上級の管理職をされていた方が定年でリタイヤされ、その後すぐに住んでいる地域の自治会運営に関わることになりました。しかし周囲の人からあっという間に総スカンで嫌われてしまいました。大きな組織をまとめていた経験をお持ちで、人望もあろうはずなのになぜなのか・・・。

何をしたかというと、自治会に参加してすぐに「君はあれをやって!」「あなたはこの担当で」「これはこうすべき」などと矢継ぎ早に周りの人に指示命令を発して仕切りだし、なおかつ自分は実際の作業には手を出そうとしなかったそうです。

この場面だけを見れば「そんなことすれば、そりゃあ嫌われるでしょう」と思いますが、実は大きな組織で大人数をまとめている管理職の仕事って、これと同じようなことが多いのではないでしょうか。この元管理職の方も、それまで仕事でやっていたことと同じペースで、当たり前の感覚で動いた結果だったようです。

組織の中でリーダー的な立場になると、“指示命令”という形で人を動かすことも増えると思いますが、これをされる側の心理として、「肯定的に捉えられないことが多い」ということは肝に銘じておくべきだと思います。

私が管理職の方々によくお伝えするのは、部下やメンバーの人たちは「指示命令に従っている」のではなく、「この指示命令には従おうと本人が判断して従っている」ということです。
“本人が判断して”の中には
「アイツは嫌いだが仕事だから仕方ない」
「言う事を聞いておいた方が得だろう」
「上司を助けたい」
「あの人に言われたら断れないなぁ」も、
いろいろな基準での判断が含まれます。

勘違いしがちなのは、指示される側は「職務上の立場として指示命令に従っている」ことが圧倒的に多いのに、指示する側は「自分は尊敬されている」「能力を認められている」「信頼されている」など、人として全面的に認められていると思い込んでいたりすることです。こういう人に限って、退職した途端に年賀状が数えるほどしか来なくなったなんていう、笑えない話を聞くことがあります。

前述の元管理職の方は、その後会社でやっていたことと地域社会での感覚のギャップに気づき、上から目線の態度を改め、実際に自分で手を動かしながら、少しずつ周りの人たちと信頼関係を作っていったそうです。そして信頼関係ができた時に初めてそれまでの組織をまとめてきた経験が活き、その地域のまとめ役になっていったそうです。

指示命令をされる側の気持ちとして、決して納得して喜んで従っているばかりではないという事、心から納得して従ってもらうには、信頼関係作りが大切だという事を、今一度心に留めて頂ければと思います。


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