2014年7月28日月曜日

自分のキャリアを明確に決めようとする弊害


少し前のことになりますが、新卒採用活動の中で実際にあったことです。

ある応募者の学生さんとの最初の面接を行う際、提出された応募書類を見ると、勉強してきた内容は、自社の事業で活かせそうなことが多々あるものでした。
少し期待しながら面接にのぞむと、その学生さんが言うには、「御社の○○部門の○○プロジェクトに興味を持ちました。その仕事に関わることができるならば御社を志望します」というものでした。他の興味ややりたいことを聞いても、かたくなに“その部署でのその仕事”ということだけを話します。「他の業務内容にはまったく興味がありません」とまで言います。

結果として、この学生さんを採用することはしませんでした。
希望したプロジェクトの仕事が永遠に続く訳はありませんから、ご本人が言っている興味を満たし続けることは会社として絶対にできないですし、何よりも興味の幅が狭くて思い込みが強すぎ、あまりにも柔軟性がないと評価したからです。

目標を明確に定めて、その目標に向かって努力するということは、誰が見ても素晴らしいことです。
ただ、その目標の定め方としてどうすればよいのかは、その人が何を目指しているのかによって、多少の違いがあると思います。

例えば医師、看護師、弁護士、教師、美容師、保育士など、国家資格や所定のスキル習得が必要で、学生のうちから取り組んでいかなければその仕事に就けないものであれば、早い時期からピンポイントで目標を定めて、その目標に向かって勉強に取り組んでいかなければなりません。

就職活動においては、自分が目指すことを明確にするようにという指導がされることがあります。きちんと目標を定めて活動することは大事なことだと思いますが、「この会社に行きたい!」にこだわれば、その会社でどんな仕事をするかまではあまり言えないでしょうし、逆に仕事内容にこだわれば、それをどこでやるかについては、柔軟に考えざるを得なくなります。

今活躍しているような経営者の中には、いつかは起業すると心に決めていてそれを実現した人もいるでしょうし、自分で思ってもいなかったが起業せざるを得なくなったなど、思いがけず社長になったという人もいます。

普通に働いている人たちも同様で、自分が初めに思い描いた通りの仕事を、いつまでも同じように取り組むことができている人は、たぶんほとんどいないと思います。
今まで長きに渡ってやってきた家業を継承するような場合でも、これから先も同じようにやっていけば良いというような保証はどこにもありません。

このように、その人がどんな仕事をしていくかというキャリアを、あらかじめ決めてしまうということは相当に難しいことです。

私が出会った学生さんは、あまりにも狭い範囲のこだわりが強い特殊な例かもしれませんが、目標を明確に定めることは重要である反面、それにこだわりすぎることは、自分の経験を広げるためには良いこととは思えません。

あまりにも狭い範囲で具体化しすぎて、なおかつそれにこだわりすぎると、自分の持っている可能性を減らしてしまうと思います。
特に自分のキャリアに関しては、自分なりに納得できる柔軟性を持ちながらの目標設定が、特に必要ではないかと思います。


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