2016年2月5日金曜日

「支援制度がないから勉強しない」という社員たち



ある会社で部門長の面談をしている中で、「部下の人材育成」という話題になりました。
その人は技術系部門のマネージャーですが、かなり専門的な知識が要求され、仕事に直接つながるような資格がいくつもあるような仕事柄の部門の方です。

その方が部下と個人目標の設定を考えるような場面で、スキルアップのための資格取得などを話題に出すと、そこで決まって言われるのが「会社として支援はしてくれないのですか?」ということだそうです。
この会社では、「社命で資格を取らなければならない」というような場合は別ですが、それ以外での資格取得というのは、あくまで個人に帰結するものになるので、あえて支援はしないという考え方をとっています。

マネージャーが部下に対してこの説明をすると、「そうであればお金もかかるし業務も忙しいので、資格取得に取り組む余裕はない」という人が多いのだそうです。「会社がお金を出してくれるならばやりますが・・・」というのだそうです。

そう言われて、では会社で支援制度を作ったからといって、それが効果的に働くかといえば、私の経験上ではあまりそうとはいえません。業務上のメリットが少ない取り組みだったり、資格を取ってお金をもらった途端に、会社を辞めてしまったりするような人に出会ったこともあります。

社会人の場合、特に仕事に関わる内容での勉強ということで言えば、少ない時間の中でよくやっていると感心するような人がいるかと思えば、そういうことはまったくしないという人もいます。仕事に関わることは、仮に自分のキャリアアップやスキルアップにつながることであっても、自分の時間は一切使いたくないという考え方であれば、そういう感じになってしまうのでしょう。

この資格取得や研修受講に関する「支援制度」の話について、私は会社で行う人材育成をどのように捉えているかということで、考え方に大きな違いが出てくると思っています。
最近の傾向として見えるのは、「企業での人材育成は投資である」という考え方です。投資であれば常に何らかのリターンを考えますから、その対象として、投資効果が大きいと思うところに集中的に投資することになります。

あまり良くない言い方かもしれませんが、会社としては、成長の見込みがある人材の方が、投資効果は高いと考えるでしょうから、そういう人たちへの支援の方が優先順位は高くなります。最近は階層別などの全社一律の研修よりは、テーマや受講者を限定した選抜研修の方が増えているのも、こういうことからだろうと思います。

これに対して「会社が支援してくれないのか」という社員の考え方は、どちらかといえば福利厚生に近いものではないかと思います。社員の生活向上に近い視点であり、そこには何かのリターンが必要という考え方はありません。
こんなところが、たぶん会社と社員の間で一番食い違っているところなのだと思います。

ここからはあくまで私の主観ですが、今はもう会社が社員の生活を確実に守ってくれる時代ではありません。そんな中で、仕事に関することに自分の時間は一切使わないとなると、裏を返せば仕事に関するすべてのことを会社に依存していることになってしまいます。自律したキャリアを放棄すると、そのツケは結局自分に降りかかってきます。

「勉強しないで仕事をする」ということは、「練習しないで試合に出る」ということと同じではないかと思います。トレーニングなしでの能力向上には、おのずと限界が出てきてしまいます。
仕事とプライベートのけじめは絶対に必要なことですが、その一方、かたくなに「仕事は仕事」と決めつけてしまうのは、今の時代ではあまり得策でないように思います。


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