2017年3月15日水曜日

組織改革に一生懸命取り組んでも効果が出ない一つの理由



どんなに好業績の会社であったとしても、経営者というのは必ず何かしらの自社への問題意識を持っています。少なくとも私は今まで、「自社はすべてにおいて万全で問題なし」という社長にはお会いしたことがありません。ほとんどの方が現状より少しでも良くしよう、改善しようと、様々なところから情報を集め、様々な人に相談し、自分なりに勉強をされています。

私の場合は人事、組織という切り口で相談を頂くことが多いですが、実際に話を聞いていくと、実はもっと大きな経営課題が隠れていたり、発生している事象の原因が実は違うところにあったりということが、かなりの頻度で起こります。

ただ、こういう状況を社長自身が理解するかどうかは、なかなか一筋縄ではいきません。特に中小企業の経営者は、自分で考えて自分が納得した上で、自分の判断で決めるという人が大半ですから、話が持ち込まれた段階で、社長が具体的な構想まで決めてしまっていることも多いからです。

以前お話をうかがった、ある中小メーカーの社長も、組織改革には大変熱心な人でした。
ただ、ちょっと思い込みが強いところがあり、人事制度やその他の人事施策で、自分がいいと思うものを見つけると、とにかくそれを自社に導入しようとします。それが定着して役立っていれば何も問題はありませんが、残念ながらその結果は今一つです。

いろいろな専門業者や社外の専門家も使ってきたようで、私がこれまでの取り組みを見せて頂いた限りでは、実際に導入された制度や施策は決しておかしなものではなく、一般的なセオリーからも外れてはいないものです。

ただ、しいて私個人の感想を言うと、導入したものがちょっとオーバースペックだったり、事前の環境整備が不十分だったり、優先順位が違っているように思うところがあります。
たぶんこれは、社長から「こうしたい」という具体的なオーダーがあり、社長からの話をもとに施策を組み立てれば、なるほどこういう形になるのも仕方がないと思われます。
多少偏りがある限られた情報をもとにしたために、要は「見立てが違っている」という印象です。

私がこの会社を見ていて最も問題だと思ったのは、次々と導入する様々な制度や施策を、継続的に運用する根気が社長をはじめ会社全体に無いことでした。忙しいからといった理由から始まり、マンネリ感も手伝って、みんなが手を抜いたり後回しにしたりしているうちに、いつの間にかうやむやになって実行されなくなっているような状態です。
そもそも、ここが解決されなければ、どんなに立派で画期的な制度を入れても、何も変革することはできないでしょう。

組織改革について、例えば他の社長などに意見を求めると、たいていが自社での成功体験の話になります。ただ、前提条件が違うので、あくまでも参考意見にしかなりません。
さらに専門家の意見となると、それぞれが制度や研修など、自分たちが得意で売り物にしているサービスを糸口にしたがります。

私も同じ立場の社外専門家なので、もちろん自分としてやりやすい得意分野はありますが、こういうときに特に大事にしていることがあります。
一つは、いかに幅広い経営視点で現場に即したものを考えるかということ。もう一つは、仮に自分の仕事にはつながらないとしても、時期尚早なものは時期尚早、不要なものは不要だとはっきり進言するということです。
結果として関係が途切れてしまうことはありますが、それが会社のためになるなら、専門家としてはそうすべきだと思います。

組織改革というのは幅が広く、何をすることが正解だと一概には言えませんが、やはり「見立てを誤る」と、せっかくの取り組みへの効果が得られません。
自社の状況を最も知っているはずの経営者でも、思い込みがありすぎると間違うことがありますし、第三者だから客観的とは限りません。

課題の本質を見極める「見立て」は、とても大事なことです。


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