2017年3月8日水曜日

「選択と集中」の変遷で思った、先人から学ぶ大切さ



もう10年近く前になると思いますが、ある会社に「選択と集中」という言葉が大好きで、それが口癖になっている部長がいました。
何かにつけては「選択と集中」と言い、部下たちに対しても、何かにつけて絞り込みを要求します。ただ、周りの人たちが見ていた限りでは、「なぜそれを選ぶ?」とか「なぜそこに集中する?」といったことも多く、どちらかといえば選択肢を狭めていたり、無駄なところに力を使っていたりということがたくさんあったようです。

「選択と集中」というのは、1980年代にGEのジャック・ウェルチ氏が実践した戦略として有名で、自社事業の中でナンバー1もしくはナンバー2を確保できる事業を「選択」し、そこにリソースを「集中」して投下することで、経営体質を強化しようとする戦略です。

日本でも90年代後半から2000年代前半までは、「選択と集中」のおかげで事業を立て直した、業績を伸ばしたというような話が数多く取り上げられていて、経営戦略としてそれを実践することが当然であり、正しいことだとされていたと思います。
その当時に書かれていた記事などをいくつか見てみると、ほとんどが成功事例のような話ばかりでした。

そして、あらためて最近書かれた「選択と集中」に関する記事を見ると、その内容はずいぶん変わっています。失敗事例が数多く挙げられていたり、是々非々で書かれていたりするものが大半になっていました。
もっとも多く取り上げられていた失敗例はシャープの液晶事業で、失敗の原因として、絶対優位ではなく比較優位の事業を選択したことの誤り、市場の将来性の読み違い、自社の開発力の見誤り、といったことが挙げられていました。

それぞれの分析は、まったくもって納得できるものばかりですが、私の記憶では、シャープの液晶事業が伸びている当時は、「選択と集中」の成功事例のように扱われていたと思います。その時から事業選択や市場性の面から失敗の可能性を言っている人がいたとすれば、予想された失敗ということになりますが、少なくとも私はそういう話を聞いたことがありません。そうなると、やはり失敗理由は「今になってみれば」という後付けの結果論のように感じます。
結果論でしか語れないということは、途中で気づくことや対策するのが難しかったということでしょう。

「選択と集中」のように定石として語られていることでも、その通りにやったからと言って必ず成功するとは限りません。実行するにあたっては必ず試行錯誤が必要で、その結果が出なければ成功なのか失敗なのかはわかりません。成功と失敗の振れ幅を小さくすることはできるでしょうが、無くすことはできないでしょう。

そのためにやるべきことは、自分たちで取り組んだ結果を次に活かすことと合わせて、先人たちの取り組み結果を自分たちでも活かすことです。自分の昨日の失敗は、すでに同じことを他の誰かが何年も前にしているかもしれません。結果が出るまでわからないのならば、過去に出た結果を参考にするしかありません。

定石にも結果論の側面があるはずです。なおさら「歴史に学ぶ」「先人に学ぶ」ということが大事だと感じています。

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