セクハラ、パワハラをはじめとしたハラスメントの話題が、財務事務次官の問題をきっかけに盛んに議論されています。
特にメディアの女性記者たちについて、初めの頃はハニートラップまがいのことをしているかのような批判が見られましたが、その後いろいろな女性記者たちの発言を聞いていて、同じようなセクハラ行為をあれほど多くの女性が受けているとは、正直思っていませんでした。
メディアの取材対象になるような人は、組織の指導的立場であったり、権力者であったり、社会的地位の高い人が多いと思いますが、本来は立場に応じた人格を求められるような人がそういうことでは、ちょっと呆れてしまうようなこともしばしばです。
私自身もかつて企業勤務の頃に何件か、人事担当としてセクハラ、パワハラにまつわる対応をしたことがあります。
ある時は飲み会の席で、顧客先担当者によるこちらの女性社員に対する不適切な行為でしたが、先方企業に謝罪を求めて当事者にそれを実行してもらい、女性社員はすぐに別の業務へ異動させるなど、わりと迅速に毅然として、それなりの対応ができたと思っていました。
しかし、それから1年以上たったある日、その女性から「あの時の嫌なことが忘れられない」「会社の対応が親身でなかった」などといわれ、その当時は「今さらそんなことを言われても・・・」というのが正直な気持ちでした。
しかし、今になっていろいろな話を聞いていると、心の傷はいつまでも残るものだということがわかるようになりましたが、特に女性に対するセクハラで、男性の私がそれを完全に理解することや、そこまで相手の気持ちに敏感になることは、さすがに難しさを感じます。
こんなところで起こってくるのが、ハラスメントと言われることを過度に恐れた「コミュニケーションの自粛」という現象です。特に中高年男性が、女性に対して業務上で必要な最低限のこと以外は「話さない」「近寄らない」という態度をとってしまうのです。
そういう人の多くは真面目で、とにかく「相手に不快な思いをさせてはいけない」「問題を起こしてはいけない」と強く考えています。
しかし、ハラスメントは相手がその行動や言動をどう感じるかということなので、個人差もありますし、何が良くて何がダメかがわかりづらいため、コミュニケーションがどんどん安全サイドの自粛方向に振れて行ってしまいます。こんな「コミュニケーション不足」が、仕事に良い影響を与えるはずがありませんし、これでは逆の意味での女性差別と指摘されてしまうかもしれません。
この「コミュニケーションの自粛」がどうしたら解消されるかを考えてみましたが、これはお互いの認識を合わせるしかなく、その女性が不快に思うことと許せるレベルことを、事前に具体的によく聞き、こちらがその基準を理解しておくしかないように思います。
何か起こってしまってからでは、女性が声をあげるのはリスクがあったり遠慮があったり、不快であっても何も言わずに抑えてしまうことが考えられますが、事前に何もない段階であれば、あえて話題にもできますし、その人にとってのハラスメントの基準を確認しておけば、何でもかんでも安全サイドで避ける必要はありません。
セクハラ、パワハラ、その他ハラスメントは基本的にはその人の主観です。何も聞かなければ他人の考えていることはわかりません。それをせずにポイントのずれた自己判断で「コミュニケーションの自粛」に走っても、肝心な仕事に悪影響が出るだけです。
相手の嫌なことは、前もってしっかり聞いてみる必要があります。
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