厚生労働省が発表した2018年版「労働経済の分析(労働経済白書)」の中で、役職に就いていない社員に昇進への考えを調べたところ、「管理職以上に昇進したいとは思わない」が61・1%に上り、「管理職以上に昇進したい」は38・9%にとどまっていたとの報道がありました。
昇進を望まない理由としては、「責任が重くなる」が71・3%で最も多く、「業務量が増え、長時間労働になる」が65・8%、「現在の職務内容で働き続けたい」と「部下を管理・指導できる自信がない」が57・7%と続いています。
このところ発表されている他の調査結果を見ても、ほぼ同じような傾向で、特に女性のほうが「普通に働きたい」「家族との時間が大事」と考える割合が高く、将来の管理職が期待される「総合職」ではなく、あえて「一般職」を選ぶ人が増えているとの話もあります。
「2020年までに女性管理職比率を3割に」という目標がありますが、当事者の心理はこれに逆行しています。
結局「管理職は大変そうなわりにメリットが少ない」と思われている訳で、特に女性管理職の場合、仕事とプライベートのバランスが取れたモデル事例が意外に少なく、「バリキャリでないと務まらない」という感じに見えるのではないでしょうか。
私が実際にいろいろな会社の現場を見ていて感じることですが、「楽しそうに仕事をしている管理職」「やりがいを感じていそうな管理職」に出会うことは少ないです。労働時間が長く、仕事量が多く、上司と部下の間に挟まり、みんな何となく疲れた顔をしています。「そもそも仕事なんて楽しい訳がない」という人もいますが、それにしてももう少し前向きな様子があっても良さそうなのにと思うことがあります。
部下たちはそんな管理職に同情的ですし、協力的でもありますが、その姿を見ていて同じ立場になりたいとはなかなか思えないでしょう。
こんな状況を変えられる方法があるのかを、少し考えてみました。
一番良いのは、「管理職がみんなやりがいを持って楽しく働いている姿を見せる」ということでしょうが、それはあまり現実的ではありません。
まず、ある調査にこんなデータがありました。
上司などに説得されて、「やむなく管理職になった人」は、男性で23%、女性で32%という一方、リーダーになった後に、「リーダーになってよかったと思う人」は、男性で67%、女性で74%だったといいます。
リーダーになれば、仕事に関する自分の裁量は増えますから、実際になってみると「意外に悪くない」と感じているようです。ここからすれば、「試しにやらせてみる」「拒否しても良い条件で経験させてみる」というのは一つの方法になるでしょう。
もう一つは組織の形の問題です。
最近の若い世代は、お互いの関係があまり階層化されていない、フラットな集団の中で過ごしてきています。良くも悪くも合議制で、できるだけみんなの合意のもとに物事を進めようとします。
リーダー的な人はいますが、一人で前面に立つというよりは、みんなの意見のまとめ役であったり、調整役であったりします。例えば、サッカーの試合でのゲームキャプテンのような、選手の役割をこなしつつ、その試合の中でチームの中心的存在でいるような人で、それは精神面も技術面も両方あります。上下に挟まれるとか、負担を一手に引き受けるような存在ではありません。
このような自分たちが経験してきたリーダー像と合致する管理職であれば、少なくとも「自信がない」という部分は軽減できるでしょう。
最近は、組織の階層や指示命令を排除した組織運営をおこなう会社が出てきていますから、こういう考え方を取り入れることも方法の一つでしょう。
私自身も、今の各企業の管理職全般の仕事ぶりを見ていて、それをやりたいかと言えばあまり気が進みません。負担の割には権限がなかったり、一方的に責任を負わせる丸投げが多かったりするからです。
私の周りには、中小企業の経営者や役員、自営業者や個人事業主といった人が大勢いますが、この人たちのほとんどは、仕事を介した夢や希望、やりたいことを明確に語ります。苦労がある半面、うらやましいことも真似したいこともたくさんあります。
企業の中の管理職も、部下にとってそんな存在になることが一番ですが、今の環境のままでは、ちょっと難しいのかもしれません。
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