2019年10月24日木曜日

社員の休暇取得を会社が前向きに思えない理由


ある報道によると、飲食チェーンのドトールコーヒーでは、今年度から本社の年間休日数を119日に固定したことで、従来は公休日としていた土日祝日のうち、一部の祝日が出勤日となったそうです。そして出勤日となった祝日は「有休取得奨励日」という形にして、それにあわせて就業規則も変更したということです。

会社はその理由として、「まだまだ有休が取得しづらい状況を打破するため」と言っていますが、本当にそうならばもともとの出勤日を有休奨励日にすればよいことで、義務化された有給休暇の取得と、祝日との調整とを合わせて行った形になっています。
この「祝日を出勤日にして有休奨励日にあてる」という方法について、厚生労働省は「違法ではないが、法定休日以外を労働日扱いにして有休取得させるのは望ましくない」と言っています。労働条件の「不利益変更」にあたる可能性があるとのことです。

ちなみに同じ飲食業界での年間休日の平均は97.1日とのことで、ドトールコーヒーの休日数は業界内でも高い水準だそうです。こうした企業が、時代に逆行する取り組みをするのは残念だとコメントされています。
しかし、同じ方法で休日数を調整する会社は数多くあり、私の身の周りでも実際によく見かけることです。

このことを知り合いの中小企業の社長やマネージャーたちに聞くと、ワークライフバランスを重視しながら生産性をあげていかなければならない時代の流れは十分に理解しています。できる限りの努力と配慮はしているように見えます。
ただ、社員を今まで以上に休ませなければならないことに対して、本音ではとても前向きには考えづらく、歓迎という感じではありません。「休暇を取りやすい環境は作ってあげたいが、それでは仕事が回らない」といいます。中小企業では人員の余力が少ない会社がほとんどで、一人欠けると他の人にかかる負荷が大きいのです。

実は日本は祝祭日の日数が、諸外国と比べて圧倒的に多いといいます。2019年では土日に重ならない祝日と振替休日の合計は17日ですが、バカンス大国のフランスでは9日とのことでした。海外の人から見ると、「日本は何でこんなに休みが多いのか」となるそうです。

ただし、有給休暇を足した休暇日数の合計では、フランスの39日に対して日本では24日とのことで、フランスは有休を使って自分の都合で休み、日本の場合はみんな一斉でないと休まないということになります。
有休取得に罪悪感を持つ人の割合が、他国の大半では2~3割前後なのに対して、日本では6割近くと高いそうです。この原因は、日本が「人に仕事をつける」のに対し、欧米は「仕事に人をつける」という違いにあるといわれており、「誰かが休むと仕事が回らない」という話と通じるところがあります。
しかし、「仕事に人をつける」と言っても、人手不足と採用難でつける人が簡単には見つからないのが実際のところです。

有給休暇の5日取得の義務化のように、取得率を上げようという施策がとられていますが、今のままではなかなか進まないように思います。
祝日を増やすのは、働く人にとって悪いことではないでしょうが、休日はどこへ行っても混んでいて値段が高いというような、一斉に行動することでの非効率にもつながっています。

休みを増やして生産性を上げるなどと都合良くはいかず、「休みは増えても業績が落ちて給料も下がる」などとなりかねません。両立するためには、やらないで済むことはやめる、誰でもできるように情報やノウハウを共有するなど、たくさんの工夫が必要です。
休暇取得日数などの数字だけを一面的に追いかけるのではなく、仕事のしかたそのものを、もっといろいろ考えて変えていかなければなりません。


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