2020年4月9日木曜日

「オーナー経営者」の底力


私がお付き合いしている企業は、大企業から中小零細企業まで様々な会社がありますが、二代目、三代目も含めた創業家オーナーが経営する会社の比率が意外に多いです。
社長の代替わりや企業フェーズの変化に伴って多くの課題が出てきますが、それを一緒に解決していくための支援を求められます。そんな問題意識を持ったオーナー社長と協働すると、私たちの支援が実を結ぶことも多いと感じています。

過去におこなわれた様々な調査結果を見ていると、実は上場企業の半数以上がオーナー企業で、売上、利益、時価総額、社員の給料といった多くの経営指標で、良好なのはオーナー企業での比率が多いといいます。

例えばトヨタ自動車、イオン、キャノン、ブリヂストン、ソフトバンク、ファーストリテイリング、楽天など、今の日本の主要企業には、創業家が経営にかかわる数々のオーナー企業があります。
もっとさかのぼれば、三菱、三井、野村といった旧財閥系企業ももとは強大なオーナー企業ですし、パナソニックやソニー、ホンダといった有名企業も、今は創業家が経営から外れていたりしますが、もともとはカリスマ経営者が創業したオーナー企業です。外資を見ても、4つの巨大IT企業の「GAFA」は、共同創業も含めてすべてがオーナー企業です。今をときめく注目企業の多くがオーナー企業なのです。

私が見てきた中でも、急激に伸びるのはオーナー社長の企業が多かったように思います。伸びる会社の経営者は、判断が早く的確で、それを社内に浸透させる力があります。動きが早いので、良いことはすぐに行動ができ、まずいことはすぐに軌道修正ができます。

その一方、オーナー企業ゆえにうまくいかなかったところもありました。経営者が自分に甘くて散財していたり、妙なこだわりで判断を誤っていたり、理由は様々です。
不真面目な人や横柄な人はうまくいかなくても仕方がありませんが、真面目な人でも判断違いや優先順位の間違いなどをきっかけにして、事業をたたまなければならないこともありました。経営センスと言われるのはこういう部分を指すのでしょう。

それでも、企業規模の大小を問わず、安定した経営の会社に、オーナーシップの会社は多いです。ほとんどの中小企業はオーナー企業ですし、他にも社員を雇っていない一人社長、飲食店をはじめとした店舗オーナー、業務委託のフリーランスで働く人などいます。日本の経済は、こういうオーナーたちの努力で保たれている部分も多いと思います。

こんな視点で見ると、例えばソニーやパナソニックは、創業家がすでに経営からは手を引いていますが、その後は徐々に業績で苦しむようになりました。
逆にトヨタ自動車は、創業家が経営陣に残り続け、現社長は14年ぶりの創業家からの就任でしたが、その後は数々の試練を乗り越えて、会社は盤石の地位を固めています。やはりオーナーの存在感は絶大です。

なぜこんなことを考えたかというと、このところの新型コロナの影響で経済の低迷が危惧され、国の支援策も様々出てきていますが、その内容を見て「実は日本は考えていた以上に貧しい」と思ってしまったことからでした。
景気が良いといっていたけれど、賃金が上がっていないということは、会社もたいして儲かっていないということです。その理由として、力のあるオーナー企業が、日本から減ってしまったことを感じたからです。オーナーシップが薄れるとともに、かつての優良な日本企業が苦戦している様子を目にすることが増えました。

属性で人を決めつけてはいけませんが、あくまで個人的な偏見も含めて思うことがあります。
例えば、日本を代表する経済団体の経団連では、19名の正副会長が全員60歳以上の日本人男性で、誰一人転職経験がなく、全員がサラリーマン経営者だそうです。
年齢や男女比の話はもちろんありますが、それよりも日本経済を引っ張る中心にいるはずのオーナー経営者が一人もいません。これでは日本を代表する経営者の意見になり得ず、日本が伸び悩む一因のように思いました。
かつてはこの中に、ソニーの盛田昭夫氏やダイエーの中内功氏のようなオーナー経営者がいたようですが、やはりそんな存在が必要ではないでしょうか。

これからの日本の立て直しには、規模の大小にかかわらず、多くのオーナー経営者が底力を発揮することが重要ではないかと思っています。


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