2021年6月7日月曜日

意外に中小企業の方が進んでいたりする人事施策

様々な環境変化の中で、企業の人事施策もずいぶん変わってきています。ここ最近は、社員の働きやすさや価値観の多様化のための、わりと働き手を重視したものが増えている気がします。

様々な動きを見ていると、特に「一つの会社で定年まで」という、終身雇用が薄れている影響と思われることが随所に見られます。「終身雇用なんてとっくの昔に終わった話」と思われるかもしれませんが、実際にはまだまだ引きずっている会社は多いです。打ち出される人事施策も、よく中身を見ていくと、そういう実態が見え隠れします。

 

例えば「副業」は、特に最近は認める会社が大きく増え、さらにただ受け身で認めるだけでなく積極的に推進しようという会社も出てきています。しかし、大多数の企業は本音ではあまり認めたくないけれど、旧態依然という悪いイメージを持たれないように、仕方なく認めているような状況でしょう。

 

ただ、私がもう10年以上お付き合いがある社員数50名弱の中小企業では、創業当初から社員の副業を積極的に認めているところがあります。多くの社員が自分で起業する形で何らかの副業をしていて、それが経営感覚を持つことや業界を超えた視野の広がりにつながって、本業にも好影響を与えているそうです。

そもそも「副業禁止」の考え方は、「会社が最後まであなたの面倒を見るから、会社の仕事だけに集中してね」ということでなければ成り立たない話です。もしいつ仕事を失うかわからないとすれば、複数の収入源を確保しようと考えるのは、働き手のリスクヘッジとして当然の感覚であり、会社が「副業禁止」を言うからには、終身雇用のように働き手が仕事を失うリスクを最小限にすることを会社が約束して初めて言えることです。

この変化を理解せずに「副業禁止」という会社はまだ多く、これはかなりの大企業にも見られることです。決して「大企業ほど進んでいる」という話ではありません。

 

定年後の雇用延長をはじめとした高齢者雇用でも、似たような状況が見られます。多くの会社では、仕事内容がそれほど変わらなくても、社員が定年を機に収入が大きく減る仕組みで、その前には役職定年があって肩書がなくなっているなど、本人のやる気を徐々に削いでいく施策が取られています。会社の本音が「高年齢者にはできれば早く辞めて欲しい」というところにあるからです。

ただし、反対にシニア活躍に積極的な企業が増えているのも事実です。採用難や少子高齢化という環境変化もあり、過去の経験を活かした仕事やその伝承など、シニアに向いた仕事で貢献してもらうことが、会社にとっても好ましいからです。

 

ここでも、私が関係している200名ほどのある中小企業は、シニアの働き手を積極的に受け入れています。65歳以上対象の正社員採用もやりますし、ほか顧問や嘱託、業務委託、契約社員など様々な形で高年齢の働き手を受け入れていて、その人たちは経験を活かして活躍しています。

そうしている理由は、やはりそれぞれの働き手が持っている過去の経験には得難いものが多く、それを自社に活かしてもらうことで今まで会社を伸ばすことができたからです。シニアの短所と言われる「柔軟性の不足」は、初めからそういうものだと受け入れていて、「頑固」「上から目線」「横柄」といった問題は、受け入れ時の見極めと、実際にそういう行動があったら即座に上司が釘を刺すことで、ほぼ改善されるそうです。

シニアの再雇用では、企業の考え方がただフェードアウトさせる、追い出すということでなく、持っている経験や能力を活かしてもらおうという方向に変わりつつありますが、こちらも決して「大企業ほど進んでいる」という状況ではありません。

 

環境変化が早く大きく進むようになった昨今では、人事施策の考え方も大きく変えなければなりませんが、歴史を積み重ねた大企業のように、過去からのしがらみが大きいところでは、なかなか変化ができない様子が見られます。

進んだ人事施策の事例は、変化対応力が高い中小企業の方が意外にノウハウを持っているケースを見かけます。

「大企業は進んでいて、中小企業は遅れている」という状況は、こと人事施策に関しては当てはまらないケースが数多くあります。いずれにしても、視野を広げて様々な企業の情報を見ることが必要になっています。

0 件のコメント:

コメントを投稿