2013年12月23日月曜日

社員に「起業家精神」を求めることへのちょっとの違和感


特に中小企業では、社員であっても「起業家精神」を持つべきだとおっしゃる経営者がいらっしゃいます。

「会社で起こることを人任せにしない」
「何でも我がこととして仕事にあたる」
「全体を見渡す広い視野を持つ」
「経営資源(人、モノ、金、情報・・・)を意識する」
「目的意識、コスト意識を持つ」
「組織を率いるリーダーシップ」・・・・.etc

こんなことを主旨に、社員に向けて「起業家精神」を求めます。「自分の食いぶちは自分で稼げ」などといいます。

確かに、「他責にせず、社員に自律を求める」ということには、私も全面的に賛成です。
私自身が組織に属していないからかもしれませんが、サラリーマンとして企業で働いている仲間や友人、後輩たちと話していて、出てくる会社の愚痴などを聞いていると、「そんなら自分でやればいいのに・・・」などとついつい思ってしまいます。(もちろん、会社にいればそう簡単にいかないことも重々承知しています。私もそうでしたし・・・)

ただ、「他責にせず、社員に自律を求める」ことが「起業家精神」なのかといわれると、私はそれにはちょっと違和感があります。
「起業家精神」を持っている人は、基本的には起業したい訳で、組織に残ってその組織の一員として貢献していくということには、あまりつながらないと思うからです。

社員に「起業家精神」を求めるということは、言い換えれば「どんどん独立しろ」とあおっているともいえます。その独立した元社員たちと取引をして、自社のビジネスを広げて行こうというような発想でもあるならば、それはそれでアリだと思いますが、そうでなければただの「人材流出奨励」であり、なおかつ流出していくのは、自社にとっては優秀な人材ということに他ならないでしょう。

強い組織にするために、「他責にせず、社員に自律を求める」ということは、絶対に必要なことですが、あくまで「組織に帰属した上で」という前提があります。
もしも求めた通りに「起業家精神」に目覚めて、結果的に巣立っていく社員がいたとしても、会社が初めからそれを望んでいることは、ほとんどないのではないでしょうか。特に中小企業ではそうだろうと思います。

求める人材像などを、どんな言葉を使って表現するかということは、実は意外に繊細で大事な部分です。
そう考えると、少なくとも社内の人材育成の範疇では、「起業家精神」という言葉は、ちょっとふさわしくないように思います。


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