2013年12月27日金曜日

「辞める」ではなく「今いる環境を変える」という選択


私も人事という仕事に関わっている立場上、「会社を辞めたい」という相談を受けることがときどきあります、いや・・・、相談というほどでもなく、今がつらい、やりがいがない、上司が信じられない、周りが使えないなどという愚痴のようなことも多いです。

そんな時私は必ず、「今の会社で自分の力で変えられることはないのか?」と聞くことにしています。
私もかつて在籍していた会社を辞めた人間なので、少々説得力に欠けますが、基本的には、「辞める前にできることがあるはず」と思っています。

なぜかというと、会社で働いている限りはどんな人でも、自分が在籍している会社のことを、他のどの会社のことよりも良く知っているはずです。仕事の進め方、それぞれの人の仕事の能力、周りの人間関係、キーマンが誰なのか、会社の問題はどこにあるのか、どんな解決方法が考えられるのか、などなど。少なくとも自分の周りで起こっていることは、いいことも悪いことも含めてすべての情報を持っているはずです。

それにひきかえ、新しい会社への転職は、これらの情報は基本的にすべてリセットになります。今まで嫌だったことやダメだったこと、直らなかった課題などは無くなるでしょうが、同じように今まで活用してきた社内情報も、身近な人脈も同僚もすべて無くなります。そしてこの良い部分は、内部にいると意外に自覚できていないものです。

よく、「会社の看板がなくなって初めて、自分の実力不足を実感した」という話を聞きますが、今やっている仕事の成果が、自分の力か会社のおかげかを切り分けるのは、なかなか難しいことです。大企業で会社のブランド価値が高い人ほど、自分の実力を錯覚しがちというのも、今いる会社の良い部分が自覚しづらいことの一つの証拠です。

それならば、どう転ぶかわからないリスクをはらんだ新しい会社にかけるより、事情をよく知った今の会社を変えられないかを考える方が、可能性があるのではないかと思うのです。
そんな行動が考えられないような会社、意味がないと思われるような会社もあるでしょうが、それならばせめて「これが解決されないならば辞める」など、差し違えの覚悟でもよいと思います。

もちろん転職することで、それまでとは見違えるようにイキイキと働いている人はたくさんいます。ただその一方で、落ち着ける仕事先をなかなか見つけられずに転職を重ね、「やっぱり一番初めの会社が良かったなぁ」などという話を聞くこともあります。

ただ理由もなく「会社は辞めない方が良い」などというつもりは毛頭ありません。辞めて環境を変えなければできないことはたくさんあります。ブラック企業のように、辞める以外にどうしようもないような会社もあります。
でも、今いる会社が普通の会社で、そこでの課題が見えているならば、「辞める」ではなく「今いる環境を変える」という選択もあるのではないかと思います。 


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