2015年7月22日水曜日

任せられない人ほど要求する「権限委譲」


「権限委譲」とは、管理者が部下に仕事と行動を任せることをいい、うまく行われれば、仕事の時間効率や生産性向上の効果があります。理想を言えば、できるだけ多くの仕事を権限委譲すれば、仕事の効率は最大限になる訳ですが、なかなかそうは行きません。

ある会社で、中堅からマネージャークラスの社員数名が、「自社の権限委譲のしかたに問題がある」と言います。
聞けば、自分たちに権限を与えないせいで、「仕事がスムーズに進められない」「判断に時間がかかる」「臨機応変な対応ができない」など、様々な弊害があるのだそうです。
問題提起の内容としては、それほどおかしなことはなく、なるほどと思える部分もあります。

そして、この話を担当の部門長に確認してみると、ちょっと呆れた笑みを浮かべながら一言、「彼らには任せられないです」とおっしゃいます。
話を聞くと、権限委譲を求めている部下たちは、“途中経過の報告や相談がない”“大事なことでも自己判断だけで勝手に進める”といったことが日常的にあり、そのために、顧客との小さなトラブルや、作業の大きな手戻り、重要な仕事の後回しといったことがしばしば発生しているそうです。

こうなると、上司の立場としては、途中経過の報告を義務付けたり、上司である自分の判断を仰ぐように指示したり、ということになりますが、これが彼らにとっては不満なことで、その結果、「権限委譲に問題がある」と言い張っているとのことでした。

正しく権限委譲を行う上でのポイントの一つに、「どの部下にどこまで任せていいのかを事前に見極めて判断する」ということがあります。管理者の中には、「誰にでも平等に任せる」という人がいますが、これは正しい権限委譲とは言えません。経験、能力、本人の資質ややる気などは、その人によって様々だからです。任せる部下の人選をしっかり行う必要があるということです。

その後、「権限委譲」を求める社員に対して、私からは、「上司が“任せよう”と思うだけの信頼が必要で、信頼されるかどうかは日常の仕事ぶり次第だ」という話をしましたが、その場ではピンと来ていない様子でした。
自分たちでスピーディーに仕事を進めようという意欲は買えるので、これからの意識と行動がどう変わっていくかにかかっていますが、いずれにしてもまだまだ時間はかかりそうです。

うまくできれば効果的な「権限委譲」ですが、任せられない人ほど要求することが多いような気がします。


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