2015年7月27日月曜日

いい人だけど、他人にも自分にも甘い社長の話


社長というのは、どんなに人当たりが優しくても、どんなに腰が低くて謙虚でも、必ずどこかに厳しい一面を持っています。そうでなければ、事業を成功させることが難しいからだと思います。

私がお付き合いさせて頂く経営者の方々も、会社規模や事業規模にかかわらず、皆さんが何かしらの厳しい一面をお持ちです。仕事への向き合い方の厳しさ、仕事の質に対する要求の厳しさ、礼儀に関する厳しさ、お金に対する厳しさ、その他いろいろあります。

また、こういう方々は、自分自身に対しても、非常に厳しい一面をお持ちです。相手に要求することは、自分でも当然同じように実行しようとしますし、相手には要求しないようなことでも、自分を律した行動を取っていたりします。

もちろん人間ですから、中には自分に甘いところもありますが、成長性や安定性がある会社では、社長のそういう部分を理解してフォローしてくれる部下が必ずいます。なぜフォローされるかといえば、尊敬、恩義、お手本、その他いろいろな事を含んだ広い意味で、「いい人である」ということだと思います。
そういう人材が身近におらず、他人に厳しく要求していることを、自分には甘く済ませているような人は、必ずどこかで事業が行き詰まっているように感じます。

 ただ、私の知り合いのある社長に、この定義にはまったく当てはまらない人がいます。厳しい一面というものが、どこにも見当たらないのです。他人に対しても自分に対しても、どちらにおいてもです。
一生懸命見つけようとして観察しましたが、結局見つけられず、周囲の人たちにいろいろ様子を聞いても、そういう部分はまったく出てきません。「ああ、あの人はそんな感じ」などと言う話ばかりです。

他人に対してきついことを言うことがなく、甘さを認めてしまうので、評判としては「とりあえずいい人」ということになっています。

ただ、仕事上で関わる人たちの評判は少し違っていて、「自分からは何もしようとしない人」と言われていました。自分と他人の両者に甘いという背景には、「やらずに済むことはやりたくない」という行動回避の願望があるようで、そのため、「他人に要求すると自分もやらなければいけなくなる」ということからか、何事も甘いままで済ませてしまう行動になっているようでした。

会社の過去からの状況を見せてもらうと、売上は多少伸びているがそれほどでもない、負債はないけど投資もしていない、固定顧客はいるけど新規開拓はほとんどない、そんな状況でした。「事業的に失敗はしていないが、成功しているとも言い切れない」、そんな中途半端な感じがしました。
この会社は、最近諸々の事情で別会社と合併することになりましたが、これもあまり主体的に決めたことではなかったようです。

こんな様子を見て思ったのは、やはり経営者には厳しさが必要であり、中でも自分に対する厳しさは、事業を成功させるためには必須なのではないかということでした。

自分にも他人にも厳しさを持ち続け、しかも「いい人」でいるということは、かなり矛盾しているようにも思えます。ただ、少なくとも私の周りでは、この矛盾を克服している経営者が成功しているように感じます。
やはり社長というのは大変なお仕事です。


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