2016年8月15日月曜日

「就職活動をやり直したい」の調査結果が意味するものを考える



日本経営協会が、新卒で就職後2年半から3年半を経過した若手社員を対象におこなった、「若手社会人就労意識ギャップ調査2016」によれば、「仮に再び就職活動を行えたらどうするか」という問いに対して、「する」という人が48.7、「どちらともいえない」が34.0、「しない」は17.4%だったということです。

また、転職経験のある割合は27.1%、「経験はないが転職の意思がある」が39.5%と、3人に2人が転職を検討している結果となっており、前回4年前の調査と比べて、「できれば就職活動をやり直したい」が3.7ポイント増えていることも合わせて、転職志向が拡大していると分析されています。

新入社員の定着に悩む人事担当者からすれば、頭の痛いところですが、この調査の中身をもう少し見ていくと、感じていることとは少し違う側面も見えてくるように思います。

調査結果によると、まず会社の就業環境について、学生時代に抱いていた「職場の人間関係・雰囲気」のイメージと比べると、「ずっといい」という回答が13.3%、「ややいい」が26.6%%、「ほぼ同じ」が37.1%など、不満を感じているとは言えない結果が出ています。職場の居心地は、人間関係を初めとして決して悪くないということです。
就職後に感じたギャップの1位は「給与面」ということで、この不満から転職につながるケースが多いことのではないかということです。

ここから見ると、採用活動の中で社風や職場の雰囲気の良さをアピールする会社がありますが、これはすでにどの会社でもある程度は実現していることで、新入社員自身も、入社してしまえばそういうものだとなじんでいく部分なので、あまり差別化の要素にはならないと思われます。

給与が不満だと言われると元も子もない感じがしますが、これは決して現状の金額のことだけを言っている訳ではなく、実力主義と言いながらそうでもないとか、格差が小さすぎるや大きすぎる、さらに将来的な昇給なども含まれていると思われます。
そうなると、社員の定着のためには、評価制度や賃金制度をどうするかというのは、実は大きな問題であるといえます。

さらにもう一点、昇進についてを聞いたところ、「昇進したくない」という人が42.7%と最も多く、次いで監督職が25.2%、管理職が21.6%、経営陣が9.3%と、地位が上がるにつれて減少していっています。「昇進したくない」は、前回調査から8.5ポイントも増えているそうです。

しかしその一方、自分のキャリア形成には意識を持っていて、就職後に感じたギャップの上位に「キャリアデザイン」が挙げられています。ただしこの原因の一つは、入社前には半数以上の人がキャリアデザインを持っていないということがあり、キャリアデザインを持って入社する人と比べて、悪い方向のギャップが生じやすいと分析されています。

ここから見ると、かつてのように、画一的に上の役職を目指す、上昇志向を刺激するようなやり方では、かえってやる気をなくしていくと思われること、一人一人の多様なキャリア意識に向き合うことが必要で、それに見合った指導、配置、異動を行い、管理職になる以外の道がないのであれば、スペシャリストのようなキャリアルートを用意することも考えなければなりません。

若手社員が「できればもう一度就職活動をしたい」というのは、たぶん社会人になって数年経った今の経験を持って、学生当時の活動時間の余裕があれば、もう少し違う選択肢を持てたと感じているからではないかと思います。

退職抑止のために会社としてできることは、採用までの過程の中で、ミスマッチや認識ギャップができるだけ起こらないような取り組みをすることと、できるだけ多くの人材が「この会社なら自分なりのキャリアが積める」「自分の思った仕事に取り組める」と思える幅を作るということです。

私が企業の現場を見ている中では、退職者が思っている本音の理由と、会社がおこなっている取り組みが、ずれているのではないかと感じることがよくあります。
ただ小手先の対策をするのではなく、人事制度や組織作りの中で、広い意味での柔軟性が求められているのだと思います。

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