2016年11月28日月曜日

「不言実行」と「あうんの呼吸」では困ること



“不言実行”という言葉がありますが、その意味を調べると、「文句や理屈を言わずに、黙ってなすべきことを実行すること」とあります。日本人的な美徳とも合致して、悪い意味で使われることはほとんどないのではないかと思います。

もう一つ、“あうんの呼吸”という言葉があります。こちらは、「二人以上で一緒に物事を行うときの、互いの微妙な気持ち。また、それが一致すること」とあります。

どちらにも共通するのは、目に見える具体的なコミュニケーションは、それほど行われていないことです。
一見すれば古風にも思えるこの価値観ですが、こういう感覚を持ち続けていて、それが風土の中に組み込まれているような会社や組織は、実は今でも数多く見かけます。
ただ、「不言実行」と「あうんの呼吸」が多い会社や組織では、実際の組織運営上で困ることがたくさん出てきます。

例えば“不言実行”であれば、文句を言わずに淡々と仕事をするという部分は良いとして、実際に何をどこまでやろうとしているのか、どんな優先順位なのか、そもそもやる気があるのかないのか、本人によく聞かない限り、周りからうかがい知ることはできません。
「目標」を心に秘めたまま、ゴールを周りには明示せずに実行するということなので、悪い意味でとらえれば、言い訳は何とでもできるということです。
もしも、“不言実行”の部下がいたとしたら、上司としてはよほど実績があって信頼できる人物でない限り、非常に扱いづらいと思います。

同じことは“あうんの呼吸”でも言えます。「言われる前に動け」とか「空気を読め」とか言う人がいますが、そういう人に限ってその前提条件を伝えていません。ですから、空気を読んで、言われる前に動いても、結果がその人の思い通りでなければ不満と怒りにつながります。特に経営者や管理者が、部下に対して一方的な“あうんの呼吸”を求めている場合を多々見受けます。

この手のことは、例えばスポーツの団体競技であれば、チームの「コンビネーション」ということにあたるのだろうと思います。ただ、この「コンビネーション」が、お互い無言のうちに何となくでき上がっていくものかといえば、決してそうではありません。

もちろん時間の経過とともに醸成されるものもありますが、結果重視の勝負の世界でそれだけを待っていては時間がかかり過ぎます。ですから、「コンビネーション」を作るために、お互いにかなりの量でコミュニケーションを取り合います。

「自分のプレースタイルはこうだ」「こういう場面ではこういうふうにプレーしたい」「ここにパスが欲しい」「こういうサポートが欲しい」など、お互いに意識のすり合わせをしながら、コンビネーションを作り上げていきます。その関係性がこなれてきたところで初めて、いちいち言葉を交わさなくても、通じ合う関係ができていきます。

特に日本の企業は、「高コンテクストな(言葉にしていない周辺情報も伝わりやすい)」文化と言われます。最近はグローバルな感覚を持ち、文化の違いを認識した上できちんと言語化したコミュニケーションをとることが習慣化している企業がある一方、この高コンテクストな文化を背景にして、「不言実行」「あうんの呼吸」がそのまま生き続けているために、組織上の問題が起こっている企業が数多くあります。

一見美徳に思える「不言実行」も「あうんの呼吸」も、組織運営の中では困ることが多いはずです。
「言語化したコミュニケーションを意図的に行うこと」は、今の企業では必須要件になっています。

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