長時間労働の規制を求めるネット署名を呼びかけた「長時間労働撲滅プロジェクト」の発起人のメンバーが、外国特派員協会で記者会見を開いたというニュースがありました。
会見では外国人記者から日本の生産性の低さと長時間労働との関連について質問があり、発起人メンバーの一人である株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長の小室淑恵氏は、「生産性が低い原因は、論理的ではない仕事が非常に多いこと」と語り、「限られた時間でやらないといけない仕事を増やすことで、プレッシャーが高まるのではないか」との質問に対しては、「生産性が上がっても、プレッシャーが増えて大変になることはない。非合理なことを排除できるので、仕事のモチベーションを上げる効果がある」と答えたということでした。
この「生産性が低い原因は、論理的ではない仕事が非常に多い」という点は、私もなるほどその通りだと思います。私が現場を見ている中でも、売上至上主義のような、とにかく量を積み上げようという仕事のしかたであったり、長時間労働を美徳とするような心理であったり、それが生活のペースになっていてダラダラと時間をすごしていたり、なかなか給料が上がらない昨今では、手っ取り早く収入を増やすには生活残業が必要というような事情もあります。
このように、時間当たりの生産性を高めようという発想がないと思えることがたくさんあり、それが「論理的ではない仕事」であることは間違いないのでしょう。
一方、企業の現場で働く管理職や一般社員が、「自分たちは論理的でない仕事をしている」と自覚をしていることは、実はあまりないのではないかと思います。自分たちなりの仕事の論理があり、それは生産性を高めてはいないけれども、自分たちの論理には合っているのではないでしょうか。
ある会社の管理職に、「あの人が仕事に関わってくると、時間と手間ばかりが増える」と言われている人がいます。私が見る限りでは、とても真面目で決して仕事ができない人ではありませんが、あまり重要とは思えない枝葉の仕事を、あれもこれもと何でもやろうとします。
その人にとっては、たぶん「やらなければならない仕事」なのでしょうが、周りから見ると、それは「不要な仕事」というものが数多くあり、その意識のかい離が大きいということです。
ですから、「生産性が低い原因は、論理的でない仕事が多いから」と言われれば、なるほどその通り、そうだそうだとなるでしょうが、では論理的でない仕事は何かと言ったとき、たぶん人によって言うことはまったく違うでしょう。
長時間労働や労働生産性の問題に対して、このところ世間の注目は高まってきていますが、個々の働き方の話になってくると、ほとんどの人が「自分以外の何か」に原因を求めます。上司、職場環境、人手、設備、仕事量、その他いろいろ挙げられますが、「自分の仕事のしかたが悪い」という人は、実はあまり見かけたことがありません。要は「自分は論理的でない仕事のしかたではないが、他ではそういうことがある」という捉え方です。
最近は、自分の仕事のしかたを自分なりに見直して、生産性を高めている人たちが増えてきたように思いますが、未だに新しい技術や新しい仕事のやり方を拒むような人も目にします。
何が論理的でない仕事なのかという共通認識と、仕事のしかたをもっと自己改革していく意識が必要ではないかと思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿