2017年1月27日金曜日

かん口令を敷いていた管理職を食い止めたある社内制度の話



ある中堅企業であったことです。
その会社は国内で数か所の地方営業所を持っていて、基本的には現地採用で人材を集めています。ただし、営業所長だけは本社採用の人材が異動していく慣例となっていて、本社への報告事項以外の日常的な営業所の運営は、各営業所の裁量に任されています。このあたりはどこの会社でもよくある組織運営だと思います。

そんな中で、この会社のある特定の営業所で、顧客トラブルが立て続けに起こりました。発注ミスをはじめとした社内処理の不手際で、顧客に迷惑をかけてしまったようです。
お付き合いの長い顧客だったこともあり、幸い大きなトラブルにはならずに済んだようですが、ここで最も大きな問題だったのは、この事実が一切本社サイドに報告されておらず、発覚したのは最後のトラブルがあってから半年近くが経ってからだったということでした。

あとから分かったことですが、ここの営業所長が、営業所の管理職を中心とした全所員に「本社には余計なことを言うな」というかん口令を敷いていたということでした。そしてそのことが発覚したのは、意外な社内制度がきっかけでした。

その制度とは、実は人事制度の中に設けられていたフォロー面談制度でした。
この会社では半期に一度、上司との面談を通じて全社員の人事評価を行いますが、その際の不公正や不満を防ぐ目的で、人事部門が直接、一部社員を選抜したフォロー面談を行っています。各部門から数名ずつ直接話を聞くことで、人事評価の話を中心にしながら、現場の問題把握と早期対応をすることが目的です。今回の問題発覚まで半年近くを要したというのは、その面談が半年に一度実施されるものだったからです。

今回結果オーライだったのは、問題の営業所はあまり業績が良くなく、全体的な評価も低いものとなっていたため、「不満が大きいのではないか」ということで、営業所の全員から話を聞くことにしたということがあります。そのことによって、この営業所長から「誰が本社に言った」「誰が告げ口した」という特定がされないという環境がたまたま作られたということでした。
比較的オープンな風土と自負していた会社側としてはちょっと信じられないことだったようですが、それほどのパワハラ的な締め付けがあったということです。

何人かの営業所員から同じ指摘が出され、問題に気づかなかった会社のことはずいぶん批判されたようですが、それでも話せる機会が作られたということは会社として幸運なことでした。

この営業所長は事実を認め、その理由は自分のマネジメント不足と、それが営業所の業績不振につながっているのを隠したかったということのようで、懲戒処分は受けることになってしまいましたが、その後は改心して、周囲のサポートを受けながら真面目にやっています。

その後この会社では全社的なクレーム管理の仕組みを入れ、末端からの情報が誰でもすぐに見ることができるようにし、さらにクレーム情報を上げた者を責めるのではなく、逆に評価するような施策をとりました。
提案制度や目安箱のような制度は、ともすれば形骸化して機能しないことも多いですが、この会社では情報共有が円滑になり、今でも良い効果を持続しているということです。

権限委譲というのは大事なことで、特に地方拠点のように物理的に離れた場所をマネジメントする上では必要性が高いことですが、適切な監視機能がないと、このような問題が起こってしまうことがあります。

いろいろな立場の複数の人間が、フォーマルとインフォーマルを使い分けながら、直接間接に話を聞くことは大切です。この会社ではたまたま人事制度の一機能からでしたが、こんなことを想定したマネジメントの仕組みの必要性を改めて感じた一件でした。


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