2017年1月9日月曜日

「いかに上司に合わせるか」が強すぎた会社の話



これはある中堅企業で見かけたことです。
社長を筆頭にリーダーシップが強い管理職が何人かいて、その人たちが中心で回しているような会社です。

会社を動かしていく上で強いリーダーがいるのは良いことだと思いますが、その反面で「強引なところがある」「人の意見を聞くより自分の意見を先に言う」「好き嫌いが激しい」「何でも白黒をはっきりつけたがる」という傾向がある人たちです。
ただし、強引でどうしようもないということは無く、他人の話を聞く耳は持っていて、部下たちの発言にはそれなりに反応し、きちんと話せば理解も対応もしてくれます。

業績自体はまずまず良い会社ですが、ここで私が見ていて気になったのは「若手社員の成長が遅い」ということです。結果的にいつまでも社長と中心メンバーの管理職たちがすべてを仕切っている感じで、世代交代の気配がまったくありません。そのことは社長をはじめ、管理職たちも自覚していて、「何とか部下育成をしなければ」という認識は持っています。

社員の定着は悪くないですし、入社してくる人材もそれなりのリーダー素養を感じさせる人がいるので、その人たちも含めて次期リーダーがまったく育ってこないというのは、仕事環境や育成方法に関する原因が大きいという感じがします。

私が特に強く感じるのは、ほとんどの部下たちの仕事のしかたが「いかに上司に合わせるか」「いかに上司が気に入ることをするか」など、上司のストライクゾーンに合わせようという動き方が多すぎるということです。

上司の顔色ばかりをうかがって態度を変えるような社員のことを「ヒラメ社員」などといいますが、そんな媚びを売るとかおべっかを使うといった表面的なことを取り繕おうとしている訳ではなく、本当に純粋に「この仕事を上司の意向に沿って進めるにはどうしたら良いか」を真剣に考えています。
真面目で信頼できる忠実な部下とは言えますが、問題は「自分の意志や考え方の表明」がほとんどないことです。それをあえて尋ねても、出てくるのは上司から受けた指示のオウム返しか、ただ考え込んでしまうような状況でした。

その後この会社でまずおこなってみたことは、社長と中心メンバーの管理職たちに「初めから自分の意見を言うのをやめてもらう」ということでした。
今まで自分たちでどんどん判断していた上司たちにとっては手間が増えますが、まず部下たちに意見を聞き、なぜそう考えるのかという理由を聞き、その上で上司の見解や考え方を話し、お互いの認識ギャップを確認した上で指示命令をしていくということを地道に続けたところ、ほんのひと月ほど経った頃から部下たちの動き方が変化し始めました。

一番変わったのは、まだまだ一部の社員ではありますが、人の意見を鵜呑みにして考えもせずに動くことがなくなり、自分なりの意志や意見を持って行動するようになってきたということです。時には上司が見落としていた部分を指摘してきたり、今まで慣習的に行われていた無駄を正したりということが行われるようになり始めました。

「上司の意向に沿って仕事をする」ということは、組織運営上は基本なのかもしれませんが、上司も間違うことはありますし、一人の見方では視野が狭くなっていることもあります。健全な調整機能のためには部下からの意見具申は大切ですし、部下が上の立場の目線で仕事をすることは、人材育成の上でも重要なことです。

「いかに上司の意向に合わせるか」という姿勢が強すぎる組織は、実は組織化が進んだ大企業の方が多かったりします。上司を巻き込まなければ組織を動かすことはできませんが、面倒だからとそれを避けて上司の言いなりで動いているようなことは、意外に多いという感じがします。

上司の立場からは、部下に意見を言わせてそれを仕事に活かす環境作りが必要ですし、部下のほうでも常に自分の意志を持ち、今やっていることの意味を考えながら行動し、必要に応じて意見具申をしていくことが必要です。
これも上司と部下のコミュニケーションとして、考えていかなければならないことではないでしょうか。


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