2018年7月11日水曜日

「人手不足倒産」に対して個々の企業ができること


帝国データバンクによれば、2018年上半期の「人手不足倒産」の件数が、2013年1月の調査開始以降、半期ベースでは過去最多となっているそうです。
「人手不足倒産」は、従業員の離職や採用難等により収益が悪化したことなどを要因とする倒産と定義していますが、この前年同期比の増加幅は3半期連続で4割を超え、年間合計で初めて100件を超えた2017年の106件を上回るペースとなっているとのことです。

業種の細分類別で、調査開始からの5年半で累計した件数では、「道路貨物運送」が29件、「老人福祉事業」が26件、「木造建築工事」は23件、「受託開発ソフトウエア」は19件と続き、やはり求人倍率が高く人材に切迫感がある業種が多くなっています。

様々な調査結果やデータからも、多くの業界で人手不足を訴える企業が増えており、今後も人手不足が深刻化して、小規模企業を中心とした「人手不足倒産」はさらに増加する恐れがあるとして、この記事では、「小規模企業ほど従業員の定着率を高める必要性が高まっている」と締めくくられていました。

それは確かにその通りで、いま社員の定着を課題として、様々な取り組みをしている企業はとても増えてきています。私のところにもこの手の相談は多くなっていますが、これは口で言うほど簡単なことではありません。

私も企業の取り組みには様々なアドバイスをしますが、企業にはそれぞれ制約条件がありますから、なかなか思い通りの効果を得られなかったり、効果が出るまでには時間がかかったりします。
採用している人材自体に問題があることもありますし、会社の事業自体の将来性、やっている仕事自体の面白味、業績とのつながりが無くせない給与水準や待遇条件など、簡単に変えられないことがたくさんあります。

これらを変えられる余地が少ないのが小規模企業であり、そんな小規模企業ほど、「人手不足倒産」が多いというのも、致し方ないところがあります。
もっとも、最高の給与水準を用意しても、日数が多くて使いやすい休暇があっても、豪華なオフィス環境であっても、それがどんな有名企業であっても、辞める人は辞めますから、そこに絶対というものはありません。

「人手不足」にどう対処するか、個々の企業としてできることに、画期的な新しい対策はもうありません。今までやってきたことの延長線上で、さらにプラスアルファを考えるしかありません。

最近は「この仕事ができる人を雇う」というより、「その人ができる仕事を捻出して与える」など、人材をどう戦力化するかに考え方がシフトしていますし、雇うのではなく請負や業務委託を活用する会社も増えています。勤務時間を柔軟にしたり、在宅勤務を認めたりして、今まで働けなかった人が少しの時間でも働けるような取り組みがされています。
IT化できるものはそれを進めなければなりませんし、もちろん待遇条件や職場環境を改善し、働きやすい職場を作らなければなりません。それは給料や休みや設備だけでなく、仕事のやりがいや人間関係なども含まれます。

これらすべての取り組みは、その会社の「企業価値そのものを上げる」ということにほかなりません。
会社で起こるすべての課題の解決策は、結局はすべてここにかかっているのではないでしょうか。

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