自販機オペレーション大手のジャパンビバレッジで、ある支店長が「有休チャンスクイズ」と称したメールを部下たちに送り付け、結果として有給取得を認めなかったという事件が、会社と交渉している労働組合から公表されて話題になっています。
聞くところでは、この会社は労働基準監督署から四度の是正勧告を受けており、長時間労働と残業代不払いに関することのようですが、「見解の相違」などと主張して勧告に従わないために、一社に対して四度という異例の事態になっているようです。
これだけでもう組織に大きな問題があることは一目瞭然ですが、私は有休クイズなどとしたメールで、幼稚でしかも手のかかるパワハラが行われた理由を、ただ組織の問題としてしまうと、この支店長個人の問題を見誤ってしまうように感じ、あえて個人に問題がなかったのかを考えてみようと思いました。
手のかけ方や面白がっているプロセスが、よくあるパワハラよりも異様な感じがしたからです。
いくつかの記事を見ていると、この支店長が問題を起こすのは初めてではなく、ミスした社員の謝罪文を支店の全員にメール転送するパワハラや、臀部を足で蹴るといった暴力を日常的に繰り返していたとのことでした。
有給休暇の申請も、普段から自身の権限でほとんど却下していたということで、社員はどんどん萎縮していった実態があるようです。
ここから先はあくまで私の想像ですが、これらの問題は当然会社も知っていて、まずいこととは思っていたはずです。それでもこの支店長が放任されていたのは、たぶん会社にとってメリットがある人材と思われていたからでしょう。
他の会社でもよくあるのは、「乱暴だけど」「嫌われているけれど」「セクハラまがいをするけれど」「酒癖が悪いけど」・・・、「でも仕事はできるから」という論理です。
まずいことがあっても多少は目をつぶろうということですが、ここで問題なのは、この人が管理職だということと、問題行為がすべて部下に向けられたものだということです。経費の不正使用や取引上の不正のような、会社に直に損害を与える問題行動とは少し性質が違います。部下をすべて敵に回してしまっては、目をつぶるなどと言って、穏便に解決することはできるはずがありません。
自分が問題を起こしても、結果的に会社が黙認するということは、本人にとってはそれが「お墨付き」なので、たぶん行為はエスカレートしていったのでしょう。パワハラ行為にわざわざ手間をかけ、ただ相手をいじめて面白がっている様子が見えるので、これについてはもう個人の歪んだ性格によるものとしか思えません。
こう考えていくと、そもそもの発端は個人の資質による部分が大きく、そこに組織としての毅然とした態度のなさや無作為から、個人の行為がどんどんエスカレートし、初めは小さな問題とたかをくくっていたか、うやむやにできると思っていたかはわかりませんが、結果的には抑えきれない事態となって今に至るのではないでしょうか。
今となって、これまでの経緯を見ていくと、あまりに会社の対応がダメすぎるので、組織の問題の割合が圧倒的に大きいですが、だからといって個人の問題を排除しては、この問題の本質を見誤ります。
仮にこの支店長が、ほとぼりが冷めた頃にどこか他の会社に転職したとして、個人の資質が変わらなければ、また同じことを繰り返す可能性があります。それを避けるには本人の教育、矯正といった、個人に対する対応も必要です。
個人への対応といっても、何がどこまでできるのかは何とも言えないところですが、組織を正すことと共に、当事者である個人を正す方法も考えなければならないと思います。
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