最近、私より10歳以上年上の、ある大手企業OBのベテランコンサルタントの方から聞いたお話です。
そのコンサルタントが以前在籍していた大手企業の人で、60歳で定年を迎えた知人から、再雇用になって給料が激減してしまったとのことで、「20万ちょっとくらいの給料ではやっていられない」「自分が請け負えるような何かいい仕事がないか」という話をされたそうです。
それに対して、ベテランコンサルタントの方は、「独立して自分の力で20万を稼ぐのがどんなに大変なことか」「自信があるなら会社を辞めて自分で仕事をすればいいし、自信がないなら今のままでいるしかない」と返したということでした。
このベテランコンサルタントが言うことには、私も全く同感です。自分の力で顧客を探し、営業や提案をし、いろいろ交渉してやっと契約がもらえます。自力でお金を稼ぐのは、わずかな額であっても決して簡単なことではありません。
ただし、それは会社から離れて、会社のブランドや商品、その他の後ろ盾が無い中で仕事をした経験があるから言えることです。そうでなければ、20万円と言われれば新入社員に初任給くらいのとらえ方でしょうし、それは「自分と同レベルの話ではない」「自分はもっともらって当然の能力と経験がある」と思うでしょう。なぜそう思うかと言えば、「今までずっとそうだったから」「周りの人もみんなそうだから」です。
定年になったこの人が、独立したOBに相談するということは、仕事に関して何らかの世話をしてもらえることを期待したと思いますが、相手がそこまですることのメリットまでは、考えていなかったはずです。これが社内であれば、同じ組織の仲間同士として、お互いが協力するのが当たり前ですから、周りは常に損得なしで協力してくれます。そして、いつの間にか、「周りが世話を焼いてくれるのが当たり前」となってしまいます。
また、自分の経験、実績がどこかで活かせるはずだという、それなりの自信もあってのことでしょうが、その経験や実績の中には、「会社のおかげ」や「その会社であればこそ」のことが含まれています。
目に見えない「他の誰かのおかげ」が必ずありますが、そういう環境の中で、「本当の自分の力」を客観視するのはなかなか難しいことです。
このように、自分にとって当たり前になってしまっていることのせいで、本当の現実が見えづらくなっていることがあります。多くのサポートが得られる環境で仕事ができるのを、私はうらやましく思いますが、そのサポートは純粋な自分の力に含まれません。どんなサポートを受けているのかに意識を持っておかないと、自分の現状や実力を見誤ります。
これは、どんな形で仕事をしている人であっても、「20万そこらの給料ではやっていられない」という思いは妥当なのか、それとも現実が見えていないのか、当たり前になっていて気づいていないことがないのかどうかは、よく考えてみる必要があります。
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