2018年9月17日月曜日

「上司も部下もない組織」が増え始めているという話


組織階層の少なさを「フラットな組織」と表現することがありますが、最近読んだ新聞記事に「上司も部下も命令も階層もない」という究極のフラット組織で運営する会社が、一部上場を果たしたとありました。

指示を受けず、自分で考えて自分で動くという自律型スタイルとのことで、ピラミッド形で上下に序列化された組織運営のスタイルを「ヒエラルキー」というのに対し、こういうフラットな組織は「ホラクラシー」といって、経営学の世界では、「ヒエラルキーかホラクラシーか」と、その優劣を論じ合う動きが活発になっているそうです。

この「ホラクラシー」が成立するために必須なのが「情報共有」とのことで、今回上場した会社も、この情報格差がありません。
一般的な階層型の会社では、上位になるほど持っている情報が多いという情報格差があり、部下の知らない情報を持っているからこそ、上位からの指示命令が生まれて組織が機敏に動くことがメリットとなります。またすべての社員が同じ情報を共有すれば、情報漏えいのリスクが高まりますし、その内容によっては社員が動揺したり誤解したりする恐れもあります。上下関係ありきの人事評価もできません。

しかし、これらのメリットとデメリットを考慮しても、組織運営を「ホラクラシー」でおこなうのは、「意思決定の早さと適切さ」「意思決定への責任感」を重視しているからです。「全員が意思決定にかかわる組織の方が変化対応しやすい」「ヒエラルキー型ではイノベーションは生まれにくい」と言っています。
この上場した会社では、ホラクラシーの弱みである評価制度は、独自のアルゴリズムで運用する360度評価の活用でカバーしており、「指示待ち」「人のせいにする」「組織への貢献意欲が低い」「性善説に応えられない」というような人は、採用の段階で妥協せずに選別しているそうです。

これは、私が今までいろいろな会社の組織に関わってきた中での実感ですが、どんな会社でも必ず問題になるのは「情報共有」と「意思決定」についてで、すべての会社がそうだと言っても過言ではありません。これは、私から見て問題ありと思っても、当事者である会社の人たちがそう思っていない場合も含まれます。

適切な「情報共有」をせず、「意思決定」に参加させないことで起こるのは、社員の自律性や当事者意識の欠如です。
ただし、これは本人だけの問題ではありません。自発的に率先して取り組もうとする人にどんどん仕事が押し付けられ、その割に決定権がなかったりします。報酬も上がらない訳ではないですが、その人の意識の高さに見合ったものとは言えないこともしばしばです。
「進んでやるだけ大変になり、待遇はそれに見合わない」となれば、仕事に意欲的に取り組まなくなっても仕方ないでしょう。

かつて、組織の意思決定を早める意図で、組織階層のフラット化が進められた時期がありましたが、中間のマネージャーがカバーしなければならない範囲が広くなりすぎ、結果としてうまく機能しませんでした。これを「ホモクラシー」に照らせば、情報共有と意思決定の方法が、従来と変わらないままだったことが原因だったと言えます。

あくまで私個人の意見ですが、会社と働く人、または働く人同士の間で、対等な関係が作れない組織は、これから生き残っていくのは難しくなっていくように思います。命令やルールで縛って働かせるばかりでは働く人はついてきませんし、働く人の側も自分の都合ばかりを一方的に押し付けて良い訳ではありません。
「情報共有」「権限委譲」「個別の相談、交渉」といったことが、これからは重要になってくるでしょう。

いずれにしても、組織の形はこれから大きく変わっていきます。上司も部下もいない「ホラクラシー」も、その方法の一つなのだと思います。


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