2018年9月14日金曜日

「ブラック産業医」を防ぐ方法はあるか


一部の産業医が、企業の不当解雇に加担しているのではないかという記事がありました。
会社側の意向を受けて、社員に対して産業医がメンタル疾患の診断をしたり、その他メンタルの不調を理由に休職させて、その後も完治していない、復職困難などといって、退職まで持ち込むということです。
「ブラック産業医」というそうです。

精神科領域が専門ではない産業医がその診断を下すことも多いようで、この点も批判されていますが、日本の医師免許は、専門にかかわらず、すべての診療科の診療行為をおこなえることになっていますから、仕方がない面があります。
私の身近で直接見かけたことはないですが、こういうことを考える会社はあるだろうし、やろうと思えばできてしまうだろうというのが実感です。

私が経験した例としては、どう見てもメンタルダウンに陥っている社員本人が、メンタル問題はない、大丈夫、働けると言って、病院にもいかないし休まないという状況を説得して、任意の病院を受診させ、そこで診断書が出て休ませることができたというものです。
無理をし続けて、直るものも直らなくなってしまうことを避けたいという理由でしたが、その後本人が復職可能の診断書をもってきて、復職させて少し経つと再発して仕事ができなくなることを繰り返すといった例もありました。

このころからずっと思っていたのは、診断書の信頼性に関する問題でした。メンタル疾患の場合、所定の診断項目のうち、当てはまる項目数がいくつあるかによって診断を下すようですが、書かれる内容が当事者や関係者の意志に左右されることが多いのです。
本人が休みたければ「病名」がつき、早く復職したければ「復職可能」といった診断書が出てきます。これを会社側の立場の産業医が書けば、休ませたい社員には「病名」をつけ、退職に追い込みたいと思えば「復職困難」と書くことができてしまいます。

なぜそうなってしまうかといえば、メンタル疾患の場合は、血液検査の結果とか、画像診断の結果とか、その他の検査数値のような、診断に関する客観的な指標がないからです。病気か否かを判断する診断テストなどはありますが、境界域、グレーゾーンになることも多いので、診断する医師の私見がいくらでも反映できてしまいます。

この「ブラック産業医」の問題を取り上げている弁護士は、産業医が主治医から意見聴取することの義務化や懲戒制度の創設といった法整備などを求めていますが、これも、診断書の診断根拠に誰でもわかる客観性があれば、問題はすべて解決します。ただ、それには様々な検査技術の進歩を待たなければならないのでしょう。

それまでの間は、法整備を含めた対処も必要でしょうが、そもそもこんな嫌がらせのようなことをする会社が無ければ法規制は不要です。
いくら解雇が難しいからといって、これを陰湿な方法で実行している会社の人たちは、どんな気持ちでやっているのかが、私にはよく理解できません。これからの人口減少社会で、人を雑に扱う会社は、確実に淘汰されていくと思います。


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