いろいろな会社で、自社の社風や雰囲気のことを社員に聞くと、その答えとして「人間関係が良い」と言われることが良くあります。会社の良さや強みとして言われることが多いです。
もう少し具体的な中身を聞くと、「話しやすい」「悪口を言わない」「変な人がいない」など、平穏を乱す人がいなくて、心穏やかでいられるなど、みんながほどほどに仲良しという感じです。
このこと自体はまったく悪いことではありません。人が集まって、集団や組織になって、そこに属する人の関係性は、良いに越したことはないでしょう。
ただ、このことが本当に会社や組織の強みになっているのかどうかは、よく注意しなければなりません。
例えば、チームスポーツの中で、チームへの貢献や、それに向けた役割を求められることはあっても、「人間関係をよくしろ」「仲良くしろ」などと求められることはありません。そのこと自体が成果につながるわけではないからです。
もちろん、「チームへの貢献」をするために、周りをよく知ることや、コミュニケーションをより密にするのがよいことはありますが、それは人間関係をよくすることや、仲良くすることとは違います。
チームスポーツであれば、ライバル関係や競争もありますから、そうなれば「人間関係が良い」とは思えないピリピリした雰囲気になることもありますが、それは切磋琢磨でもあり、締まった空気ともいえます。
つまり「人間関係の良さ」自体を組織の強みだと思ってしまうと、そこには結果を求めない緩さやぬるさが紛れ込んでしまう恐れがあるのです。
ある会社では、みんなが「人間関係が良い」と言っていましたが、実際の様子を見ていると、大した会話もせず、言い方を変えると「つかず離れず」「他人行儀」という感じで、良い関係というよりは、関係を作ろうとしていないように見えました。
それで業績が良ければ問題はありませんが、コミュニケーション不足とみられるようなトラブルが頻発していて、顧客からの信頼を失っている状況でした。会社は必死に対応していますが、社員の関係性というのは、何か強制しても急に変わるものではありません。
ここで社員たちが言っていた「人間関係が良い」は、「きついことを言われない」「干渉されない」「かかわりが少なくて楽」などの意味だったと思われ、それは組織としては弱みでしかありません。
最近は上下関係がフラットで、お互いに何でも言い合える会社も増えています。社員の当事者意識が高く、発言も活発で、素晴らしい活気を持った会社があります。緩さやぬるさがなく、本当の意味で「人間関係の良さ」を感じます。
ただし、それらの方向を間違えると、無秩序、わがまま、希薄な関係を産み出して、組織の活力を削ぐこともあります。「フラットであること」や「なんでも言い合えること」が目的化して、それを「人間関係の良さ」と勘違いしてしまうのです。
会社における「人間関係の良さ」は、共通の目標に一緒に取り組むプロセスを通じて産まれるものであり、そこには厳しさや競争、切磋琢磨の関係も含まれます。
自社の「人間関係の良さ」は本当の意味でそうなのか、今一度見直してみると良いと思います。
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