2019年12月12日木曜日

「パワハラ」の防ぎ方を考えてみる 


大手電機メーカーの三菱電機で20代の新入社員が自殺し、教育主任だった30代男性社員が自殺をそそのかしたとして、書類送検されていたという報道がありました。
「死ね」と暴言を吐かれたことなどが自殺現場にメモで残されており、自殺原因がこのようなパワハラにあったとして、男性社員を自殺教唆の疑いで書類送検したとのことです。

三菱電機では、表面化した事案だけでも2014年から2017年の間で、男性社員5人が長時間労働などによる精神障害や脳疾患で労災認定され、うち2人が自殺していたといいます。
今回の件はパワハラですが、例えば長時間労働の問題も、業務の強制や過剰なノルマが伴うことが多いと考えれば、広い意味ではパワハラの一種と言えますから、この会社にそういう企業体質があることは間違いありません。やはり会社の責任は大きく、会社全体が批判されるのも仕方がないところでしょう。
一方、社員数が10万人を超えているような会社ですから、そのすべてがパワハラ体質に染まっているはずはありません。ほとんどが良識ある人たちで、問題はごく一部の社員に限られているでしょう。

パワハラというのは、それを起こしやすい資質、性向の人がいます。
少し調べたところでは、「過剰なストレスを抱えている人」が、ストレスを自分より力が弱い部下にぶつけている場合、「自己中心的な人」が自分の考え、価値観、あるべき論を押し付けている場合、「自己顕示欲の強い人」が、自分の優位性を示すことに固執しておこなっている場合、「過剰に管理したがる人」が、管理の域を超えて事細かに監視をして、部下を疲弊させている場合などが挙げられていました。

これらは基本的な個人の資質、性格なので、修正することが難しい部分です。会社に責任があるとすれば、こういう資質の人物を権限がある立場にすえたことですが、この手の人材は一見ではアグレッシブに仕事をしていて、数字をあげていることも多いため、社内評価が高かったりします。
やはりリーダーにする人材の見極めは、とても重要なところです。

パワハラ防止を進めるために、私が考えるところでは大きく二つの方法があります。
一つは「さらに権限がある者がおさえる」ということです。会社で一番大きな権限を持つのは社長ですが、社長が先頭に立ってパワハラ防止を進めている企業は、確実に成果が出ています。
ただ、社長自身がパワハラ体質を持っているなど、それができる社長はなかなか数が少ないのが実際のところです。
また、パワハラ体質の上司は、上司からの社内評価が意外に高いなど、それなりの力を持っていて、社内の誰かでは問題を指摘しづらいことが多いです。社内の自浄作用だけで解決するのは、相当に難しいと思います。

もう一つの方法は、「社内権力の枠から外れた第三者に関与してもらう」ということです。社外に相談窓口を設けたりすることは、まさにこれにあたります。私のようなコンサルタントも、例えば問題がありそうな上司部下面談に、オブザーバーとして立ち会うようなことがありますが、これもパワハラ防止の一環です。

気をつけなければいけないのは、パワハラ加害者になるタイプの人は、上下関係に敏感な人が多く、相手によって態度が大きく違う場合があることです。自分の上司や第三者がいるときは良くても、それ以外の場所で部下を威圧するような人がいます。私は、自分に対して変にチヤホヤしてくるような相手は、特に注意をしています。
上司にとって良い部下が、その部下にとっても良い上司かどうかは、よく見ておく必要があります。

パワハラは間違いなく組織の問題ですが、それが蔓延する組織には必ず中心的な人物がいて、問題はその周辺で起こります。「みんなで注意しましょう」といった総花的なスローガンで解決することはなく、具体的な行為者の行動を、直接指摘して修正させなければなりません。

ハラスメントというのは、加害者にはあまり自覚がないことが多く、反対に受けている者にとっては死を考えるほどつらいことです。
解決のためには当事者に対する具体的な指摘が必要で、それは社内だけでは難しいことも多く、社外を含めた第三者や専門家の関与も必要です。
個別に、緻密に、具体的に、そして真剣に取り組まなければ、ハラスメントは防げません。

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